AITCニュースレター

第30号 - 2021年7月

AITC Webセミナー「DXシリーズ」(全10回)終了

昨年10月9日AITC第11回総会において、重点施策の一つとして、先端ITを包むICTの利活用による企業の社会的価値の創出へ貢献することを目指し、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する情報提供や議論等にも取り組むことが決議されました。これを踏まえ、DX分野を主導されている方々をお迎えし、「DX時代におけるソフトウェア/ビジネス/社会のあり方を考える〜役割を超えて、マインドセットを変えて、未来を創ろう!〜 」をテーマとして、AITC Webセミナー「DXシリーズ」を以下のような2パートに分けて開催しました。

<パート1>2021年1月〜2021年4月(6回)
   テーマ:ビジネスと社会をデザインし、構築するためのソフトウェア工学

<パート2>2021年4月〜2021年6月(4回)
   テーマ:日本企業におけるDX推進と実現に向けて

対象者は、DXに関心のある方全般(技術者、企業戦略担当、マネジメント)ですが、パート1は技術者寄り、パート2はマネジメント寄りとなっています。

前号のニュースレター第29号では、<パート1>第5回まで紹介しました。この号では、4月7日(水)に開催された<パート1>最後のパネルディスカッションと<パート2>の内容と様子をご紹介します。

なお、本シリーズ各回の動画、資料のうち可能なものは https://apps.aitc.jp/dx/ に公開していますので、ぜひご覧ください。

 第6回(4/7(水)) <パート1> 第6回
  パネルディスカッション
パネリスト: 鷲崎弘宜様 (早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所所長・教授、 スマートエスイー Smart SE 代表)、 平鍋健児様 (株式会社永和システムマネジメント代表取締役社長、 株式会社チェンジビジョンCTO、Scrum Inc. Japan 取締役)、 萩本順三様 (株式会社 匠Business Place代表取締役 会長 & Methodologist)、 羽生田栄一様 (株式会社 豆蔵 取締役)<MC兼任>、 山本修一郎様 (名古屋国際工科専門職大学情報工学科教授、名古屋大学名誉教授、AITC顧問)

パート1の締め括りとなる第6回では、「ビジネスと社会をデザインし、構築するためのソフトウェア工学」をテーマとするパート1の講師4名に加えて、パート2講師の山本先生にご参加いただき、羽生田栄一様をモデレータとして、パネルディスカッションを行いました。

パート1の4人の講師の方の振り返りの後、山本様からDXに関する様々な課題を指摘いただきました。パネル中に参加者に関連するアンケートの回答を求め、その結果も踏まえて、5人の登壇者による、現状の課題、DX推進と実現に向けた今後の展望に至る多様な意見の交換があり、貴重な示唆を受けました。

 第7回(4/21(水)) <パート2> 第1回
『DXの本質とガバナンスの必要性』
講師:山本修一郎様 (名古屋国際工科専門職大学情報工学科教授、
名古屋大学名誉教授、AITC顧問)

パート2の最初は、2018年からは経済産業省のデジタルトランスフォーメーションに向けた研究会委員を、2020年からはデジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会委員を務められた山本修一郎様から、DXレポート2の要約、企業変革の視点でDXガバナンス、DX経営、DX人材、そして、アジャイル開発とDXについて紹介いただきました。

経産省が2020年12月に公開した『DXレポート2』では、DX推進の本質は「レガシー企業文化からの脱却」だと指摘し、DX人材の確保では、ジョブ型人事制度の拡大を求めています。これまでの基幹系システムはメンバーシップ型人事制度の下で構築されており、デジタル技術を活用した新規事業創出を推進するために、ジョブ型人事制度に適応するモジュール型への変革が必要だという認識で、企業変革でDXの取組の要点を整理していただきました。モジュール型のシステム構成では、ビジネスとの整合性を保証するだけでなく、分解されたモジュールの円滑な再結合のためにアジャイル開発が進められていますが、そこでのDXガバナンスが重要であることが指摘されました。

 第8回(5/7(金)) <パート2> 第2回
『DXの本質とビジネスの変容』
講師:前川徹様 (東京通信大学情報マネジメント学部学部長・教授
/国際大学GLOCOM 主幹研究員)

パート2の2回目は、東京通信大学情報マネジメント学部学部長である前川徹様に、DXによって現実に起きているビジネスの変容の特徴を取り上げ、DXの本質を考えるとともに、企業がDXにどう取り組むべきなのかについてご講演いただきました。

前川様からは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を従来の情報化やデジタル化の延長で考えてはいけない。DXは情報化による効率改善や製品やサービスのデジタル化でもない。 DXはデジタルを前提としたイノベーションであり、ビジネスや組織、企業文化の変革である。 ほとんどの産業はデジタルの渦に巻き込まれつつあり、時期や規模は異なるものの変革を迫られている。」という強いメッセージをいただきました。

DXによるビジネス変容の特徴として、プラットフォーム・ビジネス、シェリングエコノミー、分解と組み換え、最適化、サブスクリプション、データ駆動、自動化があり、それぞれについて多彩な実例を元に分かりやすく紹介いただきました。そして、DX推進には、デジタルを前提にゼロから考える、顧客のニーズからスタートする、経営トップのコミットメントが重要であるとまとめられていました。

 第9回(5/19(水)) <パート2> 第3回
『日本企業のDXの現状と課題−デジタル社会実現に向けた取り組み−』
講師:片岡晃様 (独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
社会基盤センター センター長)

パート2の3回目は、IPA社会基盤センターのセンター長である片岡晃様に、日本のDXの現状と課題について解説していただき、IPAのDX推進とデジタル社会実現に向けた取り組みについてもご紹介いただきました。政府/IPAにおけるDX取り組み経緯として、以下の5つが挙げられました。

  1. DXレポート(2018/9/7)
  2. DX推進ガイドライン(2018/12/12)
  3. デジタル経営改革のための評価指標「DX推進指標」とそのガイダンス(2019/7/31)
  4. 「情報処理の促進に関する法律」の改正公布(2019/12/6)
  5. DXレポート2 中間とりまとめ(2020/12/28)

その中で、「DX推進指標」「DX企業認定制度」について紹介された後、先進事例の紹介がありました。

デジタル技術により社会の仕組みを変革し、新たな価値を創出するSociety5.0の実現に向け、さらなる加速が必要だという認識で、IPAでは、2020年5月15日にデジタルアーキテクチャー・デザインセンターを設立し、Society5.0を実現するために、「ハード」「ソフト」だけでなくルールや制度も対象するアーキテクチャをデザインしているとのことです。

 第10回(6/4(金)) <パート2> 第4回
 パネルディスカッション
パネリスト: 山本修一郎様、前川徹様<MC兼任>、片岡晃様、鷲崎弘宜様

本DXシリーズの締め括りとして、パート2でご講演くださった3講師の皆さまに加えて、パート1の最初に『DX時代の新たなソフトウェア工学に向けて -SWEBOKとSE4BSの挑戦-』と題して講演いただいた鷲崎先生にもご参加いただき、前川徹様をモデレータとしてパネルディスカッションを行いました。

以下の3点を論点として挙げました。

  • そもそもDXとは何なのか?
  • DXの成功事例(&失敗事例)
  • 日本のDXが進まない原因はどこにあるのか

DXレポートについては、その本質とともに問題点についても指摘があり、関係された方々ならではの議論となりました。DX推進と実現に向けた課題・取り組みそして今後の展望に至るまでを共に考え、一歩を踏み出す場になったのではないか、と考えます。

「シニア技術者勉強会」成果発表会を開催しました

5周目(5年目)となる「シニア技術者勉強会」ですが、完全オンラインにも関わらず、ハンズオンとチームによる「自分の欲しいもの」の試作を無事に終えることができました。

今回は、全てのチームが『CO2測定』『カメラで人体の姿勢検出』のいずれか、もしくは両方を使用したデモになっています。一部のチームでは『MQTTによる連携』も行っています。

『CO2』は、新型コロナの影響で興味を持ったチームが多かったようです。

『姿勢検出』は、これまでは環境構築が大変でしたが、ハンズオン用の環境構築が楽になったことで「使ってみたい」というチームが多かったようです。また、ハンズオン時には Raspberry PI を教材として使用しましたが、試作時には2つのチームが「GPUパワーを使いたい」とJetson Nano上で動作させています。

特に「リゼカン」チームは、お金と時間をにかけて、試作というレベルを超えた完成度です。

成果発表会の様子は、YouTubeで公開済です。資料と合わせて、参照してください。

■ハンズオン資料

「身近になったAI開発シリーズ2」
オンラインで好評開催中!

2019年に開催した「身近になったAI開発シリーズ1」では、ディープラーニング技術に触れる敷居をぐっと下げてくれたツールとして、グルーブノーツの「MAGELLAN BLOCKS」とソニーの「Neural Network Console」(NNC)の製品紹介やハンズオンを開催し、大好評を博しました。その後は新型コロナ感染拡大を受け、やむなくハンズオン中心の本勉強会を中止していましたが、オンラインでの開催準備が整ったことに伴い、この4月からツールをNNCに絞って「身近になったAI開発シリーズ2」を開始しました。

シリーズ2は、AITCの社会貢献の一環として、オープンな活動とし 、多くの非会員の方にもご参加いただいています。また、シリーズ1で受講者が陥りやすかったトラブルについて勉強会前に回避方法を伝え、当日は最初の30分間を復習の時間とし、勉強会中も講師の他にサポーター2名がチャットを監視して即座にブレークアウトルームで個別のトラブル対応をするなど、前の回を欠席された方やつまずいた方のフォローを手厚く行っています。更に、勉強会の回数を4回から6回に増やすことで、盛りだくさんの内容を丁寧に伝える工夫をしています。 また、講義の付録資料では、講義の詳細な解説や豆知識、今話題のAI資格「G検定」(日本ディープラーニング協会)のお役立ち情報なども伝えています。

(写真は前回シリーズの一場面です。こんな風に対面で実施しました。このようなやりとりをオンラインでも実施できればと、シリーズ2では工夫を重ねながら実施中です。)

7月以降は、下記の勉強会を予定しています。

  • 第5回:2021年7月16日(金) NNC「RNN編①」
  • 第6回:2021年8月12日(木) NNC「RNN編②」
  • 第7回:2021年9月9日(木) NNC「作品コンテスト(仮)」

RNN(Recurrent Neural Network)はCNNと並んで人気のあるディープラーニングモデルですが、実は原理がよくわからない、とっつきづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。毎回開催案内を配信し、参加者を募集しています。この機会に一緒に学んでみませんか?

いま知っておきたい AITCのできごと

AITC会期終了後に関する検討状況ご報告
この8月31日に会期末を控え、運営委員会では活動終了後の在り方や後継団体について検討を続けています。会員の皆様へのご案内を今月中旬に予定していますが、先行して構想の一端をお知らせします。
一番のポイントは、従来の企業主体のコンソーシアム活動から個人を主体とするコミュニティ活動の場にすること、会員はAITCの現会員でコミュニティへの参加を希望される個人とすることです。
部会や勉強会に参加されている方々からの「現在の活動を何とかして継続したい」という多くの声を受け、このまま全ての活動が無くなってしまうのは勿体ない、ということで、設立以来の11年間で培ってきた人的ネットワークを保ち、緩やかに繋がりながら、先端ITに関する情報・知見の交換や試用検証、特定分野の調査や研究活動などを自由にできる場をイメージし、コミュニティ化の構想を固めています。
設立総会は、AITCの最終総会に合わせて開催する予定です。
近々、正式のご案内をもって、会員種別を問わず現会員の皆様から参加希望者を募集します。引き続き、皆様にご参加いただけましたら幸いです。
Webセミナー 新シリーズのお知らせ
1月27日に幕を開けた“DXシリーズ”は、10回目となる6月4日の「パネルディスカッション」をもって盛況裡に終了いたしました。そして残り3ヶ月には、各部会それぞれの活動対象領域に加え、AITC全体として試用・評価、プロトタイプの作成をもって利活用を推進してきた各種技術領域の中から「AI」と「ブロックチェーン」を取り上げ、また、この一年Webセミナーを中心に活発な議論を展開してきた「DX」をもう一度取り上げる連続講演会を開催いたします。
6月16日(水)には「Deep Learning」の第一人者であるソニーの小林由幸様からご講演いただきましたが、7月には「ブロックチェーン」で2回の講演会を実施します。先ず7日(水)にはBCCC代表理事の平野洋一郎様(AITC副会長)、27日(火)にはLayer Xの福島良典様(BCCC理事、JBA理事)にお話しいただきます。8月開催予定のDX講演は鋭意調整中です。
開催案内をご参照の上、奮ってご参加ください。
総会、成果発表会の開催について
先の見えないパンデミックとワクチン接種の状況を勘案し、大変残念ですが、今回もオンラインで開催いたします。状況が落ち着きましたら、改めて盛大な懇親会を計画し、皆様との再会を楽しみたいと考えております。その折は是非ご参集ください。
現在、オンライン成果発表会は10月初旬、オンライン総会は10月中旬の開催を予定しています。
追ってご案内をお送りいたします。皆様揃って、ご参加いただけますようお願いいたします。