AITCニュースレター

第18号 - 2018年7月

外部組織とも連携して、広がりある活動を実施中
〜対外活動の近況をご紹介します〜

AITCでは、積極的に外部組織・団体と交流することで、部会・協働プロジェクトで得られたアイディアをさらに広げたり、客観的な視点でのフィードバックを得ることを目指した活動を実施しています。今回は、3つの対外活動をご紹介します。

『空気を読む家』の最新状況を報告
    〜 ソフトウェアジャパン 2018 ITフォーラムセッション 〜

協働プロジェクト『空気を読む家』の最新状況について、2018年2月2日に開催されたソフトウェアジャパン 2018のITフォーラムセッションで発表を行いました。

協働プロジェクト『空気を読む家』では、これまで、玄関、寝室(2つ)を作ってきました。今回、4つめは「失くしモノを探してくれる、忘れモノを教えてくれるリビング」へのチャンレンジを以下の内容でご紹介しました。

  1. マンガ駆動開発によるデザインプロセス:協働プロジェクトのためのシナリオ設計
  2. 『空気を読む家』におけるオブジェクト認識技術
  3. 空間OSの設計コンセプトと先端IT
  4. 『空気を読む』ためのコンテキストコンピューティング

まず、AITC独自のUXデザイン手法であるマンガ駆動開発による企画〜基本設計の進め方をご紹介しました。マンガという誰でも分かり易いコミュニケーション媒体を使うことで、アイディア創出や開発者間の意識共有が促進されます。

次に、失くしモノを探してくれるブリーフケースのデモを行いました。身近にある簡単な機器を活用していますが、アナログメーターの認識技術や人認識などアイディアと高い技術をアピールするデモでした。

そして、『空気を読む家』の核ともいえる空間OSのご紹介です。空間OSが生まれた背景に始まり、『空気を読む家』にあるモノを内部でどのように管理しているのかをご説明しました。

最後に、『空気を読む家』においてコンテキストコンピューティングをどのように適用していくかという構想を紹介しました。指摘に至る論理構造と確信度を提示するトゥールミン・モデルにより失くしモノや忘れモノを論理的に原因分析し、その予防対策を取ることを証明しました。

今回、ご紹介した「失くしモノを探してくれる、忘れモノを教えてくれるリビング」に取り組んでみて感じたのは

  • 失くしモノや忘れモノというのは人間にとって大きな課題である
  • IT技術がその課題解決に役立てる
  • 『空気を読む家』で課題解決にチャレンジしていきたい
ということでした。

協働プロジェクト『空気を読む家』は、今後も、進化し続けます。ご期待ください。

コンテキスト・コンピューティング研究部会の研究成果を発表
    〜 データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM2018) 〜

2018年3月4日から6日までの期間で、福井県のあわら市で開催された「第10回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM)」にて、コンテキスト・コンピューティング研究部会での活動成果を論文にまとめて投稿し、発表しました。

コンテキスト・コンピューティングについては、AITCニュースレター第3号 でもご紹介していますが、人と機械が協働する過程で、動的に変化する知識を社会的なレベルで形成するパラダイムです。今回の発表のタイトルと概要は以下の通りです。

  • タイトル:コンテキストコンピューティングにおける投稿の信頼性評価
  • 概要:限られた情報の中から、その課題領域と個々人の状況に合わせて、大量の投稿に埋もれてしまうような少数の重要な投稿を効果的に拾い上げ、認知バイアスを越えて投稿の有用性を感じて意思決定に反映するためには、投稿の信頼性が高いことが求められる。信頼性評価の手法として論理性をとりあげ、議論における論証のモデルであるトゥールミン・モデルを用いることができるのではないかと考えている。 このモデルを用いた想定事例として、「忘れ物を探してくれる、出かける時に忘れ物を教えてくれる『空気を読む家』のリビング」への適用案を提示した。

DEIMは、データ工学と情報マネジメントに関する様々な研究テーマの議論を目的とした合宿形式のワークショップです。旅館を一棟貸し切って開催される大規模なもので、3つの招待講演をはじめ、4つのインタラクティブセッション、300以上の口頭発表などがありました。また、参加者としては、大学・大学院の先生や学生だけでなく、企業や研究機関の研究者・技術者も多く、アカデミックな内容に偏ることなく、多様な視点で議論されていることが印象的でした。さらに、BoFセッションでは、レジェンドたる大先生方の大喜利形式の本音トークもあり、硬軟一体の研究交流の場となっていました。

我々の発表はポスターセッションと口頭セッションの二つがありました。ポスターセッションでは、立食形式で夕食をとりながら、巡回している人たちに説明し、質疑応答、議論をすることができました。特に、大学院生の方たちには興味を持っていただき、論理構造を提示するユーザインタフェースや有用性の検証方法などのアイデアをいただきました。また、一般セッションでは、準備した発表資料が多かったため駆け足の発表になってしまいましたが、静岡大学の山本先生をはじめ、識者の方々から広い視野にたった指摘・アドバイスをいただき、有益な発表となりました。

コンテキスト・コンピューティング研究部会では、2014年に対外発表した後、Project LAで検出された課題へ対応するため、集合知や情報推薦システム、議論学、機械学習などの関連研究のスタディと議論を重ね、知識とは何かを探究してきました。前回の対外発表してから4年が経過したため、今回も繰り返し目的や前提、想定などを説明することとなってしまい、充分に議論を尽くすことができなかったと感じました。たくさんのフィードバックをいただくためには、継続的に対外発表を実施し、文脈を共有していくことが必要であると実感しています。

気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)における活動報告

WXBC は「多様な気象データを高度利用し、我が国における産業活動を創出・活性化を目指す組織」として、気象庁主導の下2017年3月7日に設立されました。以来、産学官連携による気象ビジネスの推進を目指して、気象、IoT、AI等の専門家や幅広い産業分野のユーザー企業、気象事業者等を構成員として活動しており、本年4月12日時点で会員数は332者となっています(紹介資料)。 前身のXMLコンソーシアム時代から長年に亘り気象庁と緊密な関係を保持していることから、AITCはWXBCの設立準備に携わり、設立後は会員としてWXBCの中核を担い、特に人材育成に関わる活動を主導しています。

WXBCの活動は、①パートナー発見・マッチングの場 ②知見・技術の習得の場 ③気象ビジネス展望の議論の場を提供することを主眼として、2年目の活動に突入したところです。 因みに、AITCが中心となって企画立案・運営をしている人材育成WGでは、「気象データ理解力」、「IT活用力」そして「気象ビジネス発想力」の3つのスキル醸成を目的に掲げ、初年度は「気象データを理解しよう!」のテーマを掲げ活発な活動を展開してきました。

  • WXBCセミナーを東京および地方展開し、気象データへの理解と事例を知る場を提供
  • テクノロジー研修の第一弾として「気象データ分析チャレンジ!」を開催し、気象データの可視化やオープンデータとの掛け合わせによる仮説&検証のスキルを習得する場を提供

設立2年目の今年度は、「気象データを触ってみよう!試してみよう!」をテーマに夫々の活動を深めながら、気象ビジネス発想力の醸成を図っていく計画です。AITCとしては、WXBCと「気象データを“R”で可視化する勉強会」を共催したり、人材育成WGの 「気象 x IoT勉強会」で知見を提供したり、あるいは同勉強会でのプロトタイプ作成に対する技術支援を行うなど、技術面を中心に活動に関わって参ります。

AITC会員の皆様にも気象データの利活用をご検討いただきたく、今後はWXBCセミナーやテクノロジー研修をご案内してまいります。是非ご参加ください。

いま知っておきたい AITCのできごと

栄誉ある「気象庁長官表彰」をいただきました!

6月1日は「気象記念日」。 これを記念して気象庁にて「気象記念日式典」が挙行され、XMLコンソーシアム時代からの長年に亘る気象データの高度化および利活用推進に対する功績が評価され、気象庁長官から感謝状を授与されました。

気象庁様とのお付き合いはすでに10年余り! XMLコンソーシアム時代の気象庁XML作成への技術協力を皮きりに、AITCとしては、気象庁XMLセミナーの共催やITフォーラムでの共同発表、気象庁XML用APIの開発&公開、試用データのテスト、そしてWXBCビジネスフォーラムでの気象庁XML用APIやシニア技術者勉強会におけるIoT試作デモの展示等を実施してきました。一方、特別会員である気象庁様からは職員の方々が部会活動に参加されるほか、女子会の「データ分析勉強会」で気象データのアドバイザー役を務めてくださる等、日常的に多方面の交流が続いています。

気象庁様とAITC、技術者同士だからこそ、企業や組織の枠を超えた純粋で素晴らしい関係を培ってこられたのだと確信します。関係者一度、今後ともこの良好な関係が続き、連携してよりよい社会に向けて貢献ができるようにと、思いを新たにしています。