AITCニュースレター
第26号 - 2020年7月新しいセミナー様式 オンラインセミナー開催!
「ソフトウエアエンジニアの在宅勤務」
AITCでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2月下旬より集合スタイルのセミナー、部会等を中止していましたが、オンラインスタイルという新しい形態に移行して活動を継続しています。その一環として、去る6月8日には「ソフトウエアエンジニアの在宅勤務」をテーマにオンライン開催のWebセミナー第1弾を実施いたしました。新型コロナウイルス感染症に対する新しい生活様式への対応として、全国の企業等で、積極的なテレワーク活用の取り組みが加速している中で、導入に向けたポイントを、実例を中心に、基調講演と3つのセッションの構成で開催しました。今回は、各講演の概要を簡単にご紹介いたします。
講師:平野 洋一郎さん (AITC副会長、アステリア株式会社 代表取締役社長/CEO)
基調講演では、テレワークを先進的に導入されている、アステリア株式会社の事例を中心に、導入の背景、テレワークに必要な8つの項目、失敗の原因と成功のポイントをお話いただきました。
アステリアでは、2011年の東日本大震災を契機に、全社テレワークを開始し、以来、猛暑や豪雪時の天候に応じた導入や、最近では、TDM(Transpotation Demand Management)といった交通需要の集中、交通量の抑制に対応した導入など、テレワークの機会を拡充しているとのこと。
また、テレワークに必要な8項目として、「制度の整備」、「ネット接続環境」、「テレワーク機器」、「セキュリティ」、「勤怠管理」、「業務管理報告」、「会議/セミナー」、「資料共有」を挙げ、それぞれについて早く実行するための「すぐやること」と、「落ち着いてからやるべきこと」の2段階に分けて示していただきました。さらには、体制、管理者、経営者、社員の観点から、テレワーク導入の失敗の原因と、それがどうすれば成功するかのポイントと対比して説明いただきました。
新型コロナ対応としては、4〜5月の「出張実績ゼロ」を達成し、在宅テレワーク率は97%に達する状況とのこと。 気になる生産性についても、社員アンケートでは、89%が「上がっている」か「変わらない」という回答で、オフィス勤務と遜色のない結果であることが紹介されました。2020年には、「テレワーク快適化支援金」として、社員に月1万円の支給といったユニークな施策を始めたそうで、多くの方は、自宅の机や椅子の環境整備に使われた方が多いなど、内情も含めて、アステリアの状況を詳細にお話いただきました。
講師:入江 弘憲さん (AITC運営委員、リコーITソリューションズ株式会社)
セッション1では、リコーITソリューションズ株式会社で実際にリモートワークを実践しながら分散開発しているプロジェクトから、困りごとやその解決策をピックアップして紹介いただきました。
インフラや制度は全社の共通施策がある中、特にコミュニケーションに起因する課題についてお話いただきました。リモート側の発言者や周りの様子、ホワイトボードの記載が分かりにくいという課題に対しては、自社グループの全天球ライブ配信カメラを活用して会議中継をするなど、リコーグループならではのユニークな紹介もありました。アンケート結果でもこのアイデアは好評を得ており、参考になったとの声をいただいています。講師からも、「新しいフィードバックに繋げられるよう、今回のセッションで得られた情報を活用して、実践を重ねていきたい」との言葉をいただき、講師と参加者ともに意義ある講演となりました。
講師:荒本 道隆さん (AITCクラウド・テクノロジー活用部会リーダー、アドソル日進株式会社)
セッション2では、実際にWeb会議システムを使って月例ミーティングを実施しているAITCのクラウド活用部会から、Web会議システムの比較結果を報告いただきました。
Webex, ZOOM, Teamsという3つのWeb会議システムについて、専用ツールを導入せずにブラウザから参加する方法、会議やセミナを主催する立場でどれを選択したらよいか?、実際に使ってみた感想をお話しいただきました。
このテレワーク期間に色々なWeb会議システムを使った人も多いでしょうが、有名なサービスだけあってどれも簡単に使えます。だからこそ、自分でWeb会議を開催する時に、仕事で使うにはどれを選択したらよいか、イベントで使うにはどれを選択したらよいか、無料で実際にどこまで使えるか、という話は非常に参考になったとの声がありました。
講師:井出 将弘さん (AITCビジネスAR研究部会リーダー、TIS株式会社)
セッション3では、AR研究部会の活動を通じて得られた遠隔コミュニケーションに活用できる知見を中心に、ビデオチャットではなかなか難しいワークショップやインフォーマルなコミュニケーションに適したRemoやSpatialChatの紹介、またビデオチャットの先のコミュニケーションプラットフォームとしてのソーシャルVRプラットフォーム、アプリケーションについて紹介いただきました。
講演のあとにオンライン懇親会も開催されましたが、講演で挙げていただいたSpatialChatの試用会が突発的に開催されるなど、いつもの集合形式のセミナー開催と同様に、とても面白く盛り上がったの有意義な場を持つことができました。
参加者アンケートでは、「これからの職場のイメージがもてた」など、新しい気づきを得られたという感想がありました。講師からも「今後もビジネスAR研究部会では新しい遠隔コミュニケーションについて実践とディスカッションを通じてノウハウを深めて行きます。」とのコメントをいただいています。
AITCでは初の試みであったオンライン限定のセミナーでしたが、開催後に実施したアンケートでは、回答くださったほぼ全員から「非常に満足」「満足」という高い評価をいただきました。また、主催者側としても集合スタイルとは一味違うメリットも感じております。今回の経験を踏まえ、オンラインによるセミナ開催に注力してまいります。
当日の発表動画、資料は、こちらからご覧いただけます。 参加できなかった方は、是非、ご覧ください。(会員限定のページとなります。AITC会員でユーザーIDとパスワードが不明の方は、会員各社の会員代表者/連絡担当者にお問い合わせください。)
次回からのWebセミナーは身近となったWeb会議システムにフォーカスした連続講座となります。それぞれのWeb会議システムの特性を知ることでより上手な、より効率的な使い方ができるように、との思いで企画しています。奮ってご参加ください。
おすすめの図書をご紹介 「よん得」(その3)
こちらのコーナーでは、AITCの部会等でも活用し最新の技術が理解できる、 あるいは、みなさまにおすすめの「読んで得になる」図書をご紹介いたします。 前回に続き、コンテキストコンピューティング部会からのおすすめですが、今回は書籍ではなく、論文のご紹介です。
- 「情報コンテンツの信頼性とその評価技術」
- 加藤義清、黒橋禎夫、江本浩 、人工知能学会研究会資料、SIG-SWO-A602-01、2006年11月公開、10ページ
- ウェブから得られる情報コンテンツの信頼性を評価する4つの視点を提案し、関連技術について紹介しています。技術の発展は重要ですが、我々がウェブの情報に触れる際のリテラシーとして身につけておくべきことも見えてきます。
- こちらから閲覧が可能です。
- 「機械学習・データマイニングにおける公平性」
- 神嶌 敏弘、小宮山 純平、人工知能学会誌、34巻2号、2019年12月公開、9ページ
- 2019年12月10日に、機械学習の技術及び応用を研究している研究者コミュニティ(人工知能学会 倫理委員会、日本ソフトウェア科学会 機械学習工学研究会、電子情報通信学会 情報論的学習理論と機械学習研究会)が、機械学習と公平性に関する声明を発表しました。この論文は、公平性が議論される背景を事例とともに示し、公平性の基準や現状の技術・研究動向について紹介しています。
- こちらから閲覧が可能です。
次回もお楽しみに。