AITCニュースレター

第22号 - 2019年7月

「量子コンピューティング シリーズ」始動

2018年10月の総会で次年度活動対象とする主要テクノロジーとして追加した「量子コンピューティング」に関する活動を開始しました。まずは先行している各社の取り組みを聞くオープンなセミナーを3回開催し、7月からはAITC会員限定の量子コンピューティング勉強会を3回開催します。今回は4月と5月の開催結果のご報告です。

量子コンピュータには「量子アニーリング型」と「量子ゲート型」があり、「量子アニーリング型」は特定の課題に特化したもので、「量子ゲート型」は汎用のものです。 セミナーでは、富士通さんからは、すでに実ビジネスに展開中のデジタル回路でアニーリングを実現している「デジタルアニーラ」の現状をお話していただきました。 IBMさんからは、とても注目されている汎用的な「量子ゲート型」の現状をお話していただきました。

富士通研の中村さんから「デジタルアニーラ」についてお話していただきました。 ムーアの法則の終焉からドメイン指向コンピューティングの全体像とデジタルアニーラの位置づけ、量子コンピューティング技術と各社の動向、などの俯瞰的な視点と、「デジタルアニーラ」でどのくらいの規模の最適化ができるのか、どうやって最適解を見つけているのか、について解説していただきました。 動画を使った事例紹介もありました。 また、「量子ゲート型」は量子ビット数を上げるのにとても苦労していますが、「デジタルアニーラ」はソフトウエアとハードウエアの両面からまだ大規模化の余裕が残っているそうです。

IBMの渡辺さんからは「量子ゲート型」や「IBM Q」についてお話していただきました。 すでにクラウド上にある本物の5量子ビットや16量子ビット(現状は14量子ビットらしい)の実機を触る事もできるのですが、量子ビットを使ったアプリケーションの開発ではなく、量子ビットを操作するためのノウハウの蓄積中、という印象でした。 特にノイズ対策が切実で、まだNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)と呼ばれている状況だそうです。 ノイズやエラーを回避するための方式を模索している段階なので、エンドユーザーが気軽に使えるような代物ではありません。 しかし、「50量子ビットを超えると、ユーザーが使いたい機能が実現できる」「そこから先は、2の乗数で能力が上がっていく(例えば50量子ビットなら2^50、100量子ビットなら2^100)」ということだし、ある日ブレイクスルーが起こって、突然使えるようになるのかも知れません。

両社の話は、「すでにビジネスで使える技術」と「数年後(数十年後?)にビジネスの中心になるかもしれない技術」と対照的でしたが、どちらも皆さん熱心に耳を傾け、質疑応答は時間ギリギリまで続き、「量子コンピューティング」に対する注目度の高さがうかがえました。

富士通研の中村さんの「デジタルアニーラ」の資料は、こちらから参照できます。

「身近になったAI開発シリーズ」NNC勉強会(AITC会員限定)を毎月開催中!

1月から開始した「身近になったAI開発」シリーズでは、第1回のグルーブノーツ・最首社長の「MAGELLAN BLOCKS」、第2回のソニー・小林様の「Neural Network Console」(NNC)のご紹介に引き続き、AITC会員限定のNNC勉強会を4月から毎月第3木曜日夜に開催しています。

NNCはニューラルネットワークをGUIで簡単に設計できるだけでなく、画像データの自動正規化、学習曲線のリアルタイム表示や比較、評価結果の混同行列(Confusion Matrix)の作成、学習結果の履歴管理と再利用、PowerPointレポート生成、Pythonコード生成、などなど多彩な機能を提供するので、利用者がニューラルネットワークを"育てあげる"ための作業にフォーカスできます。

4月のNNC勉強会Part1では、1層と2層の全結合ネットワークを使って線形分離可能性を理解しつつ、NNCの諸機能を習熟しました。5月の勉強会Part2では、MNISTのAutoencoderに挑戦し、3つの応用例(ノイズ除去、異常検知、画像生成)を試しました。6月20日に予定しているPart3では、CNN、Dropout、Adam/Momentum、Batch Normalizationなどの技術を駆使して、Fashion MNISTの分類精度90%を目指します。また、最終回(7月)Part4のテーマはRNN/LSTMの予定です。これから参加されても、以前の資料を使った自己学習で追いつくことができます。開催案内をご参照の上、是非ご参加ください。

NNC勉強会後の予定が固まりましたので、ご案内します。8月はMAGELLAN BLOCKSを使ったハンズオンを実施、9月以降はNNCやMAGELLAN BLOCKS等を使ったグループワークでディープラーニング実践を進めます。追って詳細をご案内しますので、どうぞ奮ってご参加ください。

いま知っておきたい AITCのできごと

第10回総会および成果報告会日程のお知らせ

詳細のご案内に先立ち、恒例の「活動成果発表会」と「総会」の開催日程をお知らせいたします。10月7日(月)に日本ユニシス本社(東京・江東区豊洲)での実施を予定しています。予めスケジュールを確保いただけますようお願いいたします。