AITCニュースレター
第31号 - 2021年10月AITC、11年の活動を振り返る
〜運営メンバからの寄稿〜
先端IT活用推進コンソーシアム(AITC)は、2021年8月31日に会期満了を迎えました。XMLコンソーシアムの後継団体として2010年9月8日の発足以来11年間、会員の皆様から多大なるご支援とご協力をいただき、お蔭様で無事全ての活動を終了することができました。改めて、心から御礼申し上げます。
この11年間を振り返り、AITCの会長、副会長、部会、協働プロジェクト、AITCオープンラボ、シニア技術者プログラム、IT女子プログラムのリーダの皆様から、この期間の思い出やエピソード、知見、将来にむけた期待などに関して寄稿を12編いただいています。順に寄稿を紹介させていただきます。寄稿いただいた方は次の12名のみなさまです。(掲載順)
- 鶴保 征城 さん(AITC会長)
- 田原 春美 さん(AITC副会長)
- 荒本 道隆 さん(クラウド・テクノロジー活用部会 リーダー)
- 道村 唯夫 さん(コンテキスト・コンピューティング研究部会/協働プロジェクト リーダー)
- 井出 将弘 さん(ビジネスAR研究部会リーダー)
- 松山 憲和 さん(ユーザーエクスペリエンス技術部会/協働プロジェクト リーダー)
- 岡村 和英 さん(ナチュラルユーザーインターフェース活用部会 リーダー)
- 近藤 繁延 さん(シニア技術者プログラム 運営担当)
- 荒井 美千子 さん(IT女子プログラム 運営担当)
- 吉田 裕之 さん、瀧井 崇行 さん、入江 弘憲さん(AITCオープンラボ「身近になったAI開発シリーズ」担当)
本年8月31日をもってAITCの会期が終了しました。XMLコンソーシアム10年間、そしてAITC11年間と長期に亘る活動を支えていただいた会員企業、参加された方々、ご指導いただいた顧問等の先生方に厚くお礼を申し上げます。長きにわたる活動の幕が下りていささか感無量です。
この21年間には、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災などの大事件が続き、年号も平成から令和に変わりました。そして今なお新型コロナウィルスによるパンデミックが進行中です。
テクノロジーは一段と進化し、インターネットや人工知能(AI)が社会にさまざまな影響を与えた20年でしたが、日本がテクノロジー進化の果実を享受し、国力の成長や社会の豊かさを実現してきたかと言えば、必ずしも満足すべき状況ではありません。
これからの日本には厳しい選択肢しか残されていないと思います。人口減少、高齢化、傾いた国家財政、強大な近隣諸国、やり過ぎた金融緩和等、問題が山積みです。我々の関連でも、テクノロジーの社会実装が遅れ、新型コロナ対応ではIT敗戦と揶揄されています。
そうは言っても、「テクノロジーの進化」は明るい未来です。これからの日本で個人や企業が生き残れるかどうかは、この変化に対応できるかどうかにかかっています。
通信システムの進化だけでも、これから5Gの活用が進み、2030年には6Gが、2040年には7Gが当たり前になります。これは確定的な未来です。なぜなら、世界中で研究・開発が進み、それに日本も巻き込まれて、嫌でも進化していきます。
身近な例でも、使い勝手がよいサイトを構築して、ここ数年で会社全体の業績は10倍近く伸びた会社もあります。きっとこのような会社は、Web担当者やエンジニアがとても優秀なのでしょう。
今の企業活動で足りない部分があった時、そこを改善できるのはエンジニアです。エンジニアが提案し、実行することで、コストも下がるし売上も拡大できます。
さて、AITCの今後ですが、部会や勉強会に参加されている方々から「現在の活動を何とかして継続したい」、「このまま全ての活動が無くなってしまうのは勿体ない」等々の声が寄せられました。これを受けてアンケートで意見を集約した結果、企業中心のコンソーシアムから個人中心のコミュニティへと活動の主体を変えて、コンソーシアムの後継団体として活動することになりました。
これまでの皆様のご協力・ご支援に感謝するとともに、今後のご健闘を祈念したします。
いつの頃からかライフワークとなったコンソーシアム活動を閉じる、その時がついにやってきました。
Java3年、XML10年、AITC11年とこの3つのコンソーシアムだけでも24年、この間、多くの仲間と活動を共にしてきました。本人としては、コンソーシアム活動を通して「駕籠に乗る人」から「駕籠を担ぐ人」に変身し、活動を支える側に徹してきたと思ってきました。が、実は私こそが多くの仲間に支えていただいてきたこと、だからこそ今日に辿りつけたのだと今更ながら深く感じ入ります。改めて、独断専行に耐え、協力し、支えてくださった皆様に心から御礼申し上げます。
色々あったけれど、幸せなコンソーシアム活動を全うできました。
本当にありがとうございました。
これまで、6つのコンソーシアムの立ち上げと活動に関与してきました。夫々に語り尽くせない程の思い出があります。その中でAITCは単体の技術テーマの普及啓発あるいは市場醸成を目指す企業有志連合のコンソーシアム活動とは趣旨を異にし、特定企業への依存や関わりがなく、中立的な活動を十全にできるという点でAITCは極めてユニークであり、また、私事で恐縮ですが、既に定年後の企業から離れた立場で企業主体のコンソーシアム活動に従事したという点でも特別な存在となりました。
AITC11年間の会員数を見ると、設立時の21会員(正会員20+特別会員1)が、2013年のオープンラボ開始とともに増え始め、IoT、AI、ブロックチェーン、量子コンピューティグ等に次々と取り組む中で2018年には88会員(正会員37+準会員47+特別会員4)となり、これをピークに残念ながら減少傾向が始まり最終的には63会員(正会員26+個人会員33+特別会員4)となりました。
会員数について他責に終始したくはありませんが、この会員数の推移はこの10年の社会環境の厳しい変遷と関係があると受け止めています。特に、成果主義やRoIを重視する風潮の強まる中で、たとえ少額出資であっても先行投資的な案件は承認を得にくくなった世情の反映かと思います。
会期中を通して会員数こそ少なかったものの、AITCが胸をはって誇れるのは技術力の高い各社のトップランナー達の集団であること! 殊に多士済々の個性派が揃う部会は活動ぶりを体現するユニークな集団で、AITCの中心として活動を牽引してくれました。また、本業と部会活動とそれだけでも忙しい中、2012年からは活動レイア―の違う5部会が1つのテーマに連携して取り組む協働プロジェクトの実施にも注力してくれました。 心から感謝です。
あまりに多くの思い出があるので絞り込むのは難しいのですが、印象深い次の3つ(1.設立2年目から開始した「協働プロジェクト」、2.設立4年目から開始した「オープンラボ」、3.社会への貢献)について、記憶を辿りながらAITCの11年間を振り返ってみたいと思います。
【その1:協働プロジェクトの誕生裏話】
2010年当時、XMLコンソーシアムの後継団体を構想するにあたり、一番悩ましかったのはJava、XMLと同じ粒度で次のターゲットにできる最新ソフトウェア技術領域が見当たらなかったことです。検討に検討を重ねた結果、最終的には当時多くの人が興味・関心をもっていた複数のソフトウェア技術を取り上げ、しばらく取り組んだ上で的を絞ることにしました。そうした経緯を経て、AITCの活動が発足しましたが、傍からは「総花的」と言われるし、確かにそうとしか見えない。その一方で、取り組み対象の技術を並べ、ツラツラと眺めると、ソリューションのための技術領域が揃っている。「これだ!」と思いました。つまり、「部会を連携する活動で何か意味あることが出来るのではないか?AITCの特性になるのではないか?」、「一つのテーマの下にAITCが対象とする先端IT各分野の活動を集結、連携し、プロトタイプの構築を通して、先端ITの有用性の検証や評価をすることができるのではないか?」、「協働プロジェクトは、会員が先端ITに関するスキルやノウハウを体得する場にできるのでは?」等の思いから構想が膨らみました。そこで部会リーダーに参加を願い、議論を重ね、全面的な協力を得て「協働プロジェクト」が動き出すこととなりました。
そして生まれた協働プロジェクトの第一弾が、設立2年目に開始した「Project LA(Leads to Action)」です。「Project LA」とは、先端 IT を駆使し、膨大なデータを処理・分析するだけでなく、情報化、知識化し、一人ひとりに適した行動を促し、行動を引き起こす「知識から行動へ」の仕組みを作ることを主眼としています。 何度か実施した実証実験には特別会員である気象庁の有志が協力してくれ、災害時の情報提供と受信した情報を基に行動を引き出すことをテーマに実施しました。2011年から3年間に亘る「Project LA」のFinal Reportは、公開資料としてAITCサイト(http://aitc.jp/projects/la/ProjectLA_Final_Report_r2.0.pdf)に掲載しています。ご参照いただければ幸いです。
設立5年目(2014年)からは2つ目の協働プロジェクトとして、皆様ご存じの「空気を読む家」に取り組んでいます。「空気を読む家」とは、「居心地の良さ」、「生活に必要なこと」を考えて、実現する家であり、人々の行動を見て、世の中の知恵を取り入れ、成長する家でもあります。毎春開催される「ITフォーラム」と秋開催の「AITC成果発表会」での発表を重ねながら、「空気を読む家」づくりに取り組んできました。しかしながら、昨年来のパンデミック下では実証実験デモが難しいため、家づくりはコンソーシアムからコミュニティに引き継がれ完成させることになります。最終的にどのような家になるのか楽しみです。
協働プロジェクトで、AITCが活動対象とするラインアップを活かすAITCならではの活動が開始されたためでしょうか、以来、「総花的」と全く言われなくなりました。その意味で、AITC最初のターニングポイントは協働プロジェクトだったと思います。 協働プロジェクトを発案したのは私ですが、テーマ検討、活動計画立案から実施の全ては部会リーダーを中心に展開されてきました。改めて、部会リーダーと参加してくださった皆様に感謝します。
【その2:オープンラボの誕生裏話】
次は、皆様よくご存じの「AITCオープンラボ」に纏わる話です。2013年に「データビジュアライゼーション連続シリーズ」で幕を開け注目を集め、続くIoTシリーズ、AIシリーズで一挙に人気沸騰し、その後もブロックチェーン・シリーズや量子コンピューティグ・シリーズと続き、2020年からのパンデミック下ではオンライン開催に切り換えWeb会議システム・シリーズやDXシリーズ等々、企業が特にこれからの技術として注目している分野を中心に展開してきました。「AITCオープンラボ」は、その道の先達や識者による情報と知見満載の講演会と部会メンバー等による演習中心の勉強会の2本立てとし、終了後には講演者との質疑応答や意見交換を兼ねた交流会を実施してきました。毎回、高い評価でAITCの認知度もアップし、AITCを代表する人気イベントに成長しました。
ここでは、「AITCオープンラボ」誕生にまつわる話をご披露したいと思います。
AITCの設立当初の会期設定は3年! ですが、相当のムーブメント(例えば、Javaコンソーシアムで設立2年目に吹いたサーバーサイドJava旋風など)が起きない限り、3年間で成果を上げるのは極めて難しいことです。ご多分に漏れず、AITCも3年間では活動に目鼻がつく状態と推定し、2年目には次期検討委員会を立ち上げ、当時バリバリの若手技術者5名(全員20代後半から30代前半)とともに、次期の活動構想を検討しました。
当時のAITCは、意味ある活動をしているのに会員各社から部会活動への参加者が増えず、AITCの認知度はまだ今一つという悩みを抱えていました。そこで、検討委員会では柵(シガラミ)に囚われないアイデア出しを目指し、先ずはブレインストーミングをしながら幅広く率直な意見交換を行い、それをベースに構想を固めていくこととしました。先ずは①4年目以降にAITCが活動対象とする先端IT領域の考え方、②部会活動で培った知見を伝播し、外部からフィードバックを得る、双方向の情報と知見の交換の仕方、③より広い対象に向けて鮮度の良い情報を発信する方法や外部媒体の活用といった点に主眼を置いて検討を重ねました。結果、「部会で得た知見を伝播する場 ・ 参加者の反応や要望を部会へフィードバックする場」として「AITCオープンラボ」が誕生した訳です。
「AITCオープンラボ」はその後「シニア技術者勉強会」と「AITC女子会」の立ち上げに繋がっていき、更には、部会活動を中核とする会員主体の活動と非会員も参加可能なオープン活動の2系統の活動形態が確立することとなりました。また、現在では当たり前になっているイベント告知&集客、一般公開資料の掲載場所を外部のSNSや告知サービスを利用するきっかけも、実は「AITCオープンラボ」でした。
「オープンラボ」は「協働プロジェクト」に続くAITCのターニングポイント! ここから色々な変化が始まり、AITCの骨格、性格がより明確に定まったと考えます。
【その3:気象庁長官賞受賞そして社会への貢献】
AITC前身のXMLコンソーシアムが、2007年〜2010年にかけて「気象庁XML仕様の策定」に技術協力したことをきっかけに、AITCとしても設立から今日まで気象庁と色々な面で連携・協力をしてきました。主だったところだけでも、ITフォーラムでの共同発表、気象庁有志によるProject LA実証実験への協力、「気象庁XML利活用セミナー」の共同開催、クラウド・テクノロジー活用部会による気象庁XML用API(REST、SPARQL、Websocket & Comet)の作成・公開、気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)の設立支援、WXBCとテクノロジー研修の共同開催(気象データを“R"で可視化してみよう!、AIチャレンジ!)などがあり、更に日常的にも技術的な意見交換などを行ってきました。
2018年6月1日の「気象の日」に、AITCとして気象庁長官賞を授与いただきました。受賞理由は、「気象データの利便性向上のため専門的な知見を継続的に提供するとともにその活用方法について積極的に情報発信し気象データの高度化及び利活用推進に寄与し、その功績はまことに顕著である」とのこと。文面からもお判りの通り、この受賞は気象庁XML仕様策定に対するXMLコンソーシアム時代の技術協力はもとより、それを引き継いだAITCの長年に亘る様々な活動の積み重ねを評価いただいたものに他なりません。XMLコンソーシアム時代にはXMLによる標準化を目指し、各種業界団体のXML仕様策定にご協力しましたが、XMLコンソーシアムから今に続く気象庁ならびにWXBCとの協力関係は特別なものであり、社会に資する活動だったと今更のように思います。
AITCでは、設立当初より、先端ITの活用推進をもって「日本のITとITが支える日本の産業、社会の発展に資すること」を目的に掲げて活動してきました。更に、2013年からはより具体的に「先端ITの技術者育成を図りつつ同時に先端ITの活用を推進する、また、AITCで培われたノウハウを社会へ還元していく」と、明確に社会への貢献を位置付けました。
その活動の一環として、2013年から最終年まで継続した「オープンラボ」、「シニア技術者勉強会」、「AITC女子会」そして最終年度にオープン化した「身近になったAI開発シリーズ」が挙げられます。その全てで、非会員も無料参加とし、会員と非会員の区別をすることなくAITC活動の成果である情報/スキル/ノウハウや有識者の情報や見識を惜しみなく提供し、演習を含んで技術を習得する場を提供し、更に、部会や協働プロジェクトを中心とする調査・研究、実証検証等の活動で得られた知見とノウハウが詰まった資料を広く公開・提供するなどしてきたことを、この場を借りてご報告したく思います。
【おわりに】
この11年間、AITCは会員主体の部会活動と非会員も参加可能なオープン活動の双方をもって、先端ITに明るい技術者育成に取り組み、同時に、社会貢献にも注力してきました。AITCでは毎年会員アンケートを実施し、会員の皆様から活動に対して高い満足度をいただいてきました。そして、この夏に実施した最後の会員アンケートでは、この11年間の活動に対し満足94.9%のご評価をいただき、併せて、「社内の人材育成に役立っている」、「毎月の部会活動やセミナー等何もかもが自分の糧になった」、「部会活動の結果を部会外に展開・還元できている」、「これまで研究してきた先端技術のビジネスへの応用の可能性が見えてきた」等、沢山のコメントをいただきました。中でも、「スキルの高い人達が企業の垣根を越えて沢山活動しており、このような活動はなかなかない」、「AITCでの人的な交流に大きな価値を感じる」、「この繋がりを維持したい」等の声が多く寄せられました。 設立当初から、活動基本方針の一つに「人的ネットワークの構築」を掲げてきたAITCとして本当に嬉しいことです。
そして、今、コンソーシアムの繋がりを維持する形で、コミュニティが誕生します。 コミュニティ化に伴い、活動の主体は企業から個人に変わります。活動上の制約は緩やかに、その分、一人一人が責任を持つ形となります。 目指すは、先端IT活用推進のために「やりたい人が、やりたいことを、己の責任において自由にできるコミュニティ」でしょうか。 ある人はワクワク、ドキドキしながら新しい分野に取り組み、ある人はコンソーシアムでの部会や協働プロジェクトの活動テーマを更に追求し、ある人は最新技術情報の入手や意見交換や人の繋がりを楽しむ等々、人それぞれの思いと目的にあわせた活動ができる場になるよう願っています。 これからも人の繋がりを大切に、夫々にコミュニティの場を活かしながら、共に成長していけることを願っています。
最後まで共に走り抜いてくださり、本当にありがとうございました。
XMLコンソーシアムを入れると2001年からの20年間、AITCになってからは2010年からの11年間、本活動に参加してきました。また、AITCの立ち上げ時からクラウド・テクノロジー活用部会(前半は研究部会)のリーダーとして活動してきました。「クラウド」という言葉は2009年頃から広く使われ始めましたが、言葉の定義自体が幅広いために、何がクラウドで何がクラウドじゃないか分かりにくい状況でした。当初は『言葉の定義を調査しよう』から活動を開始しましたが、今となっては『何でもかんでもクラウド』になってしまった感があります。
思い返せば10年以上前は、新しい技術は「セミナーに行って話を聞くか、書籍を読む」ぐらいで、実際に触れられるようになるまでには時間がかかっていましたが、クラウドの登場によって「短い時間単位で安価に借りられて、誰でも利用することができる」に変わりました。例えば、量子コンピュータのD-WAVEは1,500万ドル(17億円)と非常に高価ですが、AWSではたった0.3ドルで使ってみることができます。また、コロナ過でWeb会議がとても増えましたが、Web会議の利用者のほとんどは、どこにあるサーバを利用しているのか一切意識していません。それでもWeb会議上で重要なミーティングを日々行っています。数年前から、新しい物はまずクラウド上に現れて、そのままクラウド上で利用され続けていくことが定番化してきました。そしてそれは今後も続いていくでしょう。
活動している中で、「クラウドは十分普及したんだから、もう新しくないでしょ。別の名前にしたら?」という意見も多くもらいましたが、「新しい技術は、クラウド上に利用できる形で出てくる。何でも試してみたいから、クラウドの名前のままが良い」と言い張って、なんとか最後まで守りぬくことができました。 AITCでの活動を通して、企業の中で仕事をしているだけでは中々遭遇できない体験を沢山する事ができました。月に1度、色々な企業の会議室にお邪魔して、5時間にわたって「何か面白い新しい技術は無いかなぁ」と損得抜きでディスカッションするのは、とても刺激的でした。部会内では持ち回りで講師をお願いしましたが、教える側が一番勉強になることを体感する事ができたと思います。また、AITCは複数の企業による団体ですが、そのおかげで色々な所とも交流を持つことが出来ました。特に気象庁とは、XMLコンソーシアムで『気象庁防災情報XML』仕様策定のお手伝いをした縁で、気象庁のスーパーコンピュータや生の衛星データを見学させてもらったり、現場の人の貴重な話を聞かせてもらえました。特に、スーパーコンピュータの運用を支ているインフラまで時間を気にせずじっくり見せてもらえたのは、とても良い思い出です。コミュニティになってからの活動はまだ未定ですが、「まずはやってみる」は続けていきたいので、今後ともよろしくお願いします。
わたしはコンテキスト・コンピューティング研究部会の立ち上げ時にはメンバーとして、2014年11月からは牧野さんの後を継いでリーダーとして活動させていただきました。部会の活動は会社の業務とはやや異なる分野ですが、いろいな気づきや学びを得ることができ、本業へのよいフィードバックもあり、たいへん感謝しております。
当初は「コンテキスト・コンピューティング」がAITCの固有の名称であり、それが何であるのかもわからず、それを明らかにしたいという気持ちで参加しました。参加者の多くの方が「よくわからないけれど、おもしろそう」と感じられたのだと思います。その中で「コンテキスト・コンピューティングの項をWikipediaに載せる」ことを裏の目標に活動が始まりました。初年度は参加者も多く(20名以上)、志向もまちまちであったこともあって、技術調査とHCI(Human Computer Interface)、CAE(Context Enabled Architecture[何か作りたい])の三つのワーキング・グループに分かれて活動していました。ここでは、研究所やソフトハウス、メーカーなど様々な背景の参加者が集まり、定例の部会は話題が広範囲で造詣が深く、新鮮・刺激的でたいへんワクワクしていました。
そして、2011年に協働プロジェクト『Project LA』が始まると、プロジェクトの基本的な構想がコンテキスト・コンピューティングのPoC(Proof of Concept)的な側面もあり、その進捗とともに部会の活動は協働プロジェクト寄りになっていきました。この協働プロジェクト『Project LA』を通じて得られた成果を論文として学会で報告することができました。
その後、コンテキスト・コンピューティングの目的は「近未来の社会的情報基盤の提言」ですが、一足飛びには叶わないので、協働プロジェクト『Project LA』で顕在化した課題とコンテキスト・コンピューティングの活用を題材に活動しました。部会としてはコンテキスト・コンピューティングの理論と実践、応用の三つをテーマに置きました。理論としては情報の集約(情報推薦、機械学習など)、情報の信頼性、意思決定理論、社会心理学などを学び・議論し、実践では近代的ソフトウェアのプラットフォームとしてのWeb関連技術を中心に調査・試用しました。また、応用としては協働プロジェクト「空気を読む家」での活用を前提に様々な検討・議論・提案をしてきました。応用先として協働プロジェクト「空気を読む家」での活用を前提としたものの、具体的で身近な課題解決を志向する点では思いは共通ですが、方法論としてのギャップを感じることも多々あり、関係する各方面に苦労を強いることになったかもしれません。それでも、具体的な応用先があったからこそ部会の活動全体が深まったと感じています。
部会ではAITCの方々はもちろんのこと、各分野のエキスパートにご教授いただいたり、議論させていただくことができ、大変感謝しております。コンソーシアムからコミュニティに形態は変わりますが、「近未来の社会的情報基盤の提言」にはまだ道半ばです。今までの活動の成果を引き継いでさらなる成果をあげられるよう活動してまいりますので、今後も変わらずよろしくお願いいたします。
2018年5月よりビジネスAR研究部会(BizAR部会)に参加し、2019年10月からは短い間ですが、BizAR部会のリーダーを務めさせて頂きました。BizAR部会の月例会や臨時部会でのメンバーやゲスト、顧問の三淵先生との刺激的なディスカッション、さらには協働プロジェクト『空気を読む家』における他のAITCの部会とのコラボレーションを通じて、個人的にはこの3年と少しの間の活動の中で成長させて頂いたという思いが強くあります。
BizAR部会について振り返るとARの技術調査や実際のARデバイスを使ったプロトタイピングを行うだけでなく、そもそもARとは如何に人間を拡張する技術なのかという人間を中心とした問いを続けてきたことが特徴として挙げられます。2012年7月から11月にかけて行われた議論をまとめ、2013年5月に公開した「AR産業論」ではBizARのARを「人間の知覚能力を強化する」技術やサービスを含む「超広義のARとしての概念」と定義し、このようなARがインフラとして社会に浸透した際の社会像や技術のあり方を議論しています。この「AR産業論」はBizAR部会の考えるARの概念の根幹をなしています。今でも読み返す度に新しい発見があり、この2021年においては今後の10年でBizARのARが社会に実装されるという「革命の予感」(AR産業論 第一章)を感じます。
もう一つBizAR部会の特徴を挙げるとすると中川雅三さんが開発された「空間OS」が上げられます。「AR産業論」において言及されている「コンテキスト産業」や「総連携」を実現するための基盤として開発された「空間OS」ですが、協働プロジェクト『空気を読む家』において各部会の技術や知識をつなぐ中心としての役割を担うことで「AR産業論」のビジョンから実際の実装のあり方の見通しを示すことができたのかなと思います。
今後のコミュニティについては引き続き受け継いだバトンを持って活動させていただく予定ですが、10年間の活動を経て成長したため、BizARのARは発足当初のARの概念からは少し窮屈になっているのを感じます。この10年間の活動の成果を元に引き続き活動していくということに変わりはありませんが、コミュニティへの移行後はまずは新しい部会の名前を考えるところからスタートしたいなと考えています。コンソーシアムの会期終了で一旦の区切りとなりますが、引き続きよろしくお願いいたします。
2011年度に活動を開始したユーザーエクスペリエンス(UX)技術部会について、9年間の活動を振り返ってみます。
ユーザー体験をデザインするための技術を追求するをテーマにUX技術部会がスタートしました。最初、UXという言葉の意味や概念は理解していました一方、ユーザー体験をデザインする手法や技術について習得が難しいということで、まず、外部の有識者の方をお招きして、計7回のセミナーを実施し、UXデザインとはなにか、またUXデザインプロセスの重要性について、理解を進めました。そんな中、書籍「UXデザイン入門」と出会い、いわゆるデザイナーではない、技術者や設計者でも実践できるUXデザインプロセスについて議論するようになりました。協働プロジェクト『Project LA』のUXデザインの実践と通して、辿り着いたのが、『マンガ駆動開発』でした。
マンガは多くの人にとって、理解しやすいメディアです。最近では、エンターテイメントだけではなく、教育、マーケティング、技術解説など活用範囲が広がっています。マンガの特徴として、人の感情や発話やその時々の背景を表現できるということが挙げられます。このマンガの特徴をUXデザインに活用できないかという発想から、UXデザイン全体をマンガを作成するように実現できないかということから『マンガ駆動開発』の議論をスタートしました。マンガを作成するツールも幾つかでてきていて、素人でもそれなりのマンガを描く環境が整っていたことも、議論を後押ししました。ご関心がある方は、AITCの成果物をご覧いただくか、『マンガ駆動開発』でWeb検索してください。
『マンガ駆動開発』は、協働プロジェクト『ProjectLA』、協働プロジェクト『空気を読む家』を実践の場として、開発プロセスのブラッシュアップを行ってきました。『マンガ駆動開発』という開発プロセスだけで、決して、良いユーザー体験を実現できるものではありません。マンガの理解しやすさ、表現力によって、利用者の体験を共有しやすくなります。また、更なるアイディアを発案しやすくなると感じています。まだまだ、『マンガ駆動開発』は発展途中の開発プロセスだと感じています。
今後の先端IT活用推進コミュニティの活動で活用され、更なるブラッシュアップと体系化が進むことを期待しています。
「NUI(ナチュラルユーザーインターフェース)」とは、人間が日常生活で行っている振る舞いと同様な自然な動作を通じてコンピューターへの働きかけが行えるインターフェースのことであり、対象物への直接的な指示や 直感的な操作が出来るということを特徴としています。例えば、タッチパネル。画面上に表示されたボタンやスライダー等に触れることで、日常的に用いているテレビのリモコンなどと同様の感覚でコンピューターの操作を行うことを可能としています。例えば、音声コントロール。人間同士で当たり前のように用いられるコミュニケーション手段である音声を用いて、コンピュータに動作の指示を与えることが可能です。
AITCでは、2013年に「ナチュラルユーザーインターフェース活用部会」を立ち上げ、NUIをより身近なものとし、NUIを活用することによってビジネスやサービスにおける様々なアプリケーションの利便性を向上させるべく活動を行ってきました。
2014年には最初の大きな取り組みとして「NUIを活用した交通切符販売機の改良」と題し、
- 利用者の視線を検知して表示言語の切り替えを行う
- タッチパネル上のボタンに指を近づけることで触れる前にヒント的な追加情報を表示する
- 画面に触れずに路線図の拡大縮小・スクロールを行う
といった仕組みを組み込んだ券売機インターフェースの試作を行い、その過程を通じて多くの知見を得ることができました。また、その際に用いたモーション検知センサーなど当時まだあまり一般的ではなかったデバイスを紹介し、実際に利用体験してもらえる場として「ガジェット祭り」を開催し、部会に留まらずコンソーシアム内外から多くの出展協力とご参加を頂くことができました。
その後発足した協働プロジェクト「空気を読む家」においても、日常的な人間の振る舞いが自然なインターフェースとしてシステムと繋がることを目標とした検討を進めてきました。直感的で当たり前の操作というのはこれまでの経験の積み重ねによって培われるものであり、その人その人によって異なっています。黒電話のダイヤルを見ても使い方がわからない世代が増えているという話は皆さんも耳にされたことがあるかもしれません。或いは、同じ動作であっても状況に応じて異なる意味を持つという場合もあります。空気を読む家では、利用者の経験や置かれた環境に応じてより適切な結果が得られるよう、また時には利用者がよりよい結果を得られるための行動を促すようなインターフェースというものを考えてきました。
NUIは既に身近なものになっていますが、まだまだ未発達で不自然な部分も多く残されています。今後のコミュニティにおいても、より自然なユーザーインターフェースの探求が行われていくことを期待しています。
AITCの活動の中心である部会の成果を持ち寄って何かやってみよう、ということで会員規約に則って理事会の承認を受けて、協働プロジェクトが始まったのは、東日本大震災の記憶が色濃く残る2011年の秋のことです。
興味のある技術分野が異なる5つの部会のメンバーと会員有志が集まって「何をすべきだろうか」と東中野のセミナーで泊りがけで合宿したことを思い出します。その合宿でテーマの骨子として「情報や知識を収集するだけでなく、情報や知識を活用して行動し、日常生活に活かすこと 〜 Lead to Action 〜」が決まりました。そして、様々な議論を通じて、「関心事にチェックイン」システムのProof of Conceptとして実証実験を実施するため、そのアプリケーションとしてSystem LAを開発することになりました。その後、活動メンバの多大な努力でSYstem LAはα、β1、β2、...と版をすすめつつ、System LAを活用した効果的な検証方法を探りながら実証実験を繰り返しました。最終的には、有志で北九州に伺ってAITC外の一般の方々に実験に参加していただき、システムの有用性を実証することができ、その成果を学会で発表することができました。この詳細については、AITCの認定成果物として公開さてていますので、そちらを参照してください。
協働プロジェクト『Project LA』では苦労もあり、いろいろとご迷惑をおかけしたことと思いますが、作成したシステムやシナリオ、論文といった具体的な成果をあげることができました。しかし、それにも増して、各部会間の風通しが改善されたことや先端的な分散共同開発を体験できたことなど、経験という目に見えない成果を得られたことはとても良かったと感じています。
協働プロジェクト『Project LA』は完結して約7年になりますが、そこで得られた課題や疑問、改善点など、調査・研究すべきネタの宝庫でもあります。今後もこれらのネタをゆっくりと着実に消化していきたいです。また、協働プロジェクトのような非営利目的での組織的(集団)活動は成熟した現代社会における活動の先端的なスタイルであると考えられます。活動形態がコミュニティになるとさらに協働プロジェクトの重要性が高まるのではないでしょうか。さらに、効率や生産性ばかりを追い求めていた社会が、技術の発展とソフトウェア化によって「人間らしさ」を求めるようになるとの指摘があります。先端技術で人間の幸福に寄与するという考え方が協働プロジェクト「空気を読む家」にもあるようです。あらためてみなさまにも協働プロジェクトに参加していただき、いっしょに「先端」を体験していきましょう。
協働プロジェクト『ProjectLA』の次の協働プロジェクトをどうするか?2014年10月24日の合同部会で、議論がスタートしました。各部会で検討してもらったテーマは、観光(東京オリンピック/パラリンピックを意識)、医療、政治、気象、エネルギーなど幅広い分野で、技術・課題を議論しました。各部会、部会リーダー会、運営委員会での議論を経て、『空気を読む家』(という言葉が)が誕生したのは、11月28日の部会リーダー会&運営委員会でした。
IoT、AIなど当時、注目され始めた技術の活用、身近な課題、高齢化社会という社会課題などへのチャレンジということに加え、キャッチーな単語と何となく意味を共有できるということで決まったのではないかと思います。今となってなっては、言い出しっぺが誰かか定かではないでのですが・・・
活動を開始して7年間。『空気を読む家』の実現に向け、玄関、寝室、リビング、キッチンなどを題材に、家の中の課題の抽出と技術的解決に取り組んできました。様々なセンサーの活用、人間にフィードバックするためのAIなどのアルゴリズムやアクチュエータの活用など先進技術への取り組みの一方で巻き起こったのが、"『空気を読む』とは、そもそも、どういうことなのか"議論でした。
- 朝、陽が昇ったらカーテンを開ける自動化は空気を読んでいるのか?
- 人がいなくなったらら自動的に掃除を始めるお掃除ロボットは空気を読んでいるということなのか?
- 自動化やスマートと『空気を読む』とは何が違うのか?
協働プロジェクトメンバーで、さんざん議論を繰り返してきました。7年間の活動を経た今、ようやく『空気を読む』ことの片鱗を掴みかけたところです。今後の先端IT活用推進コミュニティの活動で、更に『空気を読む家』が進化し、『空気を読む』とは何なのかを明らかにしていきたいと思います。
2021年8月31日に会期末を迎え、コンソーシアムとしての活動が終了いたしました。 AITCシニア技術者プログラム(以下、シニア勉強会)は、AITCのオープンな活動として主にIoTにフォーカスした勉強会を実施してまいりました。活動期間の5年間で多くの方にご参加いただき、若手、シニア技術者の技術力研鑽の場、交流の場としてご活用いただきました。今回は5年間の活動を振り返りたいと思います。
シニア勉強会は、AITC 5年目である2015年3月に発足し、当時先端ITの分野として業界から注目を浴びていたIoTをテーマに、基礎学習や、Arudino、センサー実機を用いて実際に動くものを作るという活動をスタートしました。
1年目の当時は、今ほどIoT製品が世の中に出回っておらず、またIoT開発人口も少なかったこともあり、毎回が試行錯誤の連続でした。しかし、そこはシニア技術者、IoTの基本的な技術である、昔とった杵柄で電子回路、電子基板に関する知識をフル活用し、次々に難問をクリアされていました。1年目の締めくくりとして2つのIoTアイデアを実装しました。いま振り返ると使用するセンサーも少なく、シンプルな機能ものではありましたが、先端技術を学び自らの手でやり抜く姿に「シニアといえど、技術者としてまだまだ現役だぞ」という「シニアの気概」を見せていただきました。
2年目からは勉強会の形式を「期間は1年間、前半は講座形式で座学を、後半はグループ開発」という形式の枠組みを確立し、運営してまいりました。回を重ねる毎に参加人数、様々なバックボーンの方にご参加いただき、若手/シニア技術者のみならず、技術職以外の方、学生の方など、異文化交流さながらの装いを見せてきました。扱う機材もRaspberry Pi、Jetsonなどの高性能機器に、IoTアイデアも複数の機器を連携させるものやスマホアプリ、クラウドサービスと連携するものなどが登場し、年々成果発表会の作品はまるで企業の新製品発表会と見まごうほどで、毎回盛況の中で会を締めくくることができました。
最後に、改めてシニア勉強会にご参加いただいたみなさま、ご支援いただいたみなさまに対し、5年間という長い期間シニア勉強会を盛り上げてくださったことに運営お礼申し上げます。第11期の成果発表会にて「今後も機会があれば参加したい」というありがたいご意見もいただいています。今後の予定は決まっていませんが、また機会がありましたらこのような場を設けたいと考えています。その際は多くの方のご参加をお待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
AITCの中でIT女子プログラム(以後、「AITC女子会」)が始まったのは2015年。当初は一参加者として、後にAITC女子会の運営担当として関わらせていただきました。足掛け6年間の活動を振り返ってみますと、節目ごとに世の中の変化を感じながら方向性を決めてきたように思えます。
《1つ目の節目:IoT》
AITC女子会の最初の活動は「AITCシニア技術者勉強会」との共同運航によるワンボードマイコン “Arduino" 工作からスタートしました。
IoT が世の中を賑やかしていた頃のことで、Arduinoを介してセンサデータがクラウドで表示されたときには思わずみんなで「やった!」のガッツポーズ。アイディアソンから実装まで、夏休みの自由研究の楽しさを存分に味わった活動でした。
《2つ目の節目:AI(人工知能)》
囲碁で名人に勝ったり、猫を認識したり。AIの新しい可能性を見聞きし始めたのはIoTとそれほど変わらない頃だったでしょうか。
IT女子だって人の子。砂糖にアリが群がるようにAIに群がったものの、AI砂糖があるのは険しい山の上。統計を勉強したり、可視化プログラミングを学んだりと、体力作りに励んでみても山裾をうろうろするばかり。
この状況を一変させたのがSonyのNeural Network Console の登場でした。GUIの操作だけで AI を実現できる様は、山頂までロープウェイがひかれたようなもの。「果報は寝て待て」とそっと唱えた瞬間でした。さあ、山の頂へ!
《3つ目の節目:新型コロナ》
ところが・・・突然の with CORONA です。
仕事も生活も大混乱の中で、勉強会の開催を諦める選択肢も浮かびました。でも・・・「モノは作らないから、会場に集まらなくても」「自分はオンライン勉強会に参加していますよ」そうした声を受けて、オンライン勉強会へと舵を切ったことが今では良い選択だったと考えています。
AITCが会期を終える今もまだ外出や移動がままならない状況は続いていますが、ITは移動しなくても顔を合わせて、会話して、考える場を私たちにプレゼントしてくれました。
女子会の特長とも言える「お菓子持ち込み」ができなくなったのは残念でしたが、きっと近いうちに進化したITによって画面の向こうの人にお菓子を渡せる時代もくることでしょう。コミュニティ活動の未来を楽しみにしています。
最後に、個別のお名前は割愛させていただきますが、AITC女子会の活動にご支援・御助力賜りました皆様、活動を実のあるものとしてくださった参加者の方々に感謝いたします。
(講師の吉田裕之、運営&演習サポートの瀧井崇行と入江弘憲)
「身近になったAI開発シリーズ」担当の3人組(講師の吉田裕之、運営&演習サポートの瀧井崇行と入江弘憲)です。
AITCでは、2015年6月期のオープンラボで松尾豊先生に「人工知能の未来〜IoT時代のAIに向けて〜」をご講演いただいて以来、AI領域に関する講演会や鼎談、各種の勉強会を展開してきました。 3人組で担当した「身近になったAI開発シリーズ」に直接つながる勉強会として、2016年6月から2018年1月まで吉田が講師として実施した会員限定の「TensorFlow勉強会(第一期、第二期)」があります。開催発表とともに新入会の希望者も殺到して募集枠を増やす程の人気ぶりで、AI第3の波到来を強く感じたものです。この勉強会ではプログラマーでなければハードルが高いと実感するTensorFlowに会員各社の技術者(第一期、第二期ともに各40名参加)が果敢に挑戦した訳ですが、最終回の発表会では、各チームからレベルの高い活動成果が報告されたことが懐かしく思い出されます。
その後、「MAGELLAN BLOCKS」や「Neural Network Console (NNC)」などディープラーニングの敷居を下げてくれるツールが誕生して、AI開発がぐっと身近になってきたことをきっかけに、「身近になったAI開発シリーズ」を開始しました。2019年1月〜2020年1月の1年間にわたる「シリーズ1」は集合スタイルで、AIへの取り組みやツール紹介の講演会、基本的な機能や操作を学ぶハンズオン、さらにグループ別勉強会を実施しました。グループ別勉強会は、30名の参加者がそれぞれ使ってみたいツールと取り組んでみたいテーマを選び、我々のアドバイスを受けながらも互いに切磋琢磨し合って研鑽を積む、密度の高い学びの場になりました。
「シリーズ1」の好評に応えて「シリーズ2」を2020年2月開始する予定でしたが、新型コロナ感染拡大に見舞われ、演習での密接を危惧してやむなく延期となりました。満を持して再開に漕ぎつけたのは2021年4月のことです。 今回はAITC最終期とあって社会貢献の一環として、従来の会員限定から非会員も参加可能なオープン活動とし、演習中心の勉強会をフルオンラインで実施することに挑戦しました。オンライン開催にあたっては、シリーズ1では4回で実施した内容を6回にし、ゆっくり、じっくり取り組めるように変更する、Web会議システムのBreakout Sessionを活用して躓いている参加者を個別にサポートできるようにするなど、最大限の工夫をして臨みました。それでも、参加者にとっては何となく質問がし難い、スピードについていけないとか、手を動かすので精一杯でしっかり理解するまでには至らない等々の悩みがあり、他方、講師側にとっても参加者の理解の状況が把握し難い、演習で躓いている人へのサポートがやはり難しいなど、毎回、フルオンラインでの演習の難しさ、虚しさを痛感し、その思いと闘ったというのが本音です。
講師と参加者の意思疎通、参加者同士の協調や連帯など微妙な空気感はやはりFace to Faceが一番です。コミュニティへの移行後、もし本シリーズを再開するとしたらFace to Faceで安心してできる状況、躓いている人の画面を一緒に見ながらサポートできる演習環境が確保されてからでないと難しいかと考えています。
「Tensor Flow勉強会」開始から「身近になったAI開発シリーズ」終了まで5年間!関与した期間に違いがある3人組ですが、AITCにおけるAI領域の活動に主体的に関わることで多くの人と出会い、切磋琢磨し合う場をサポートすることで自分のスキルアップも図れるなど、色々体験することができ良かったと思っています。
コミュニティ化のご案内
- 会期終了後の活動形態につきましては、7月12日(月)に「AITC会期終了後の活動ならびに参加希望者募集のご案内」でお知らせした通り、コンソーシアムとしてのAITCの成果物や資産を継承する団体として、コンソーシアムの会期末時点の会員で参加を希望される個人を会員として、コミュニティ活動を開始いたします。
- 今回のコミュニティ化は、コンソーシアム会員から寄せられた「現在の活動を何とかして継続したい」、「AITC(コンソーシアム)で培った人の繋がりをこれからも維持していきたい」との多くの声を受けて実現したものです。この思いを大切にし、これからも先端ITに関する情報・知見の交換や試用検証、特定分野の調査や研究活動等、やりたいことに挑戦し、何かを見つけたり、得たり、そんな場にしていきたいものです。
- コンソーシアム時の部会活動等をコミュニティで継続する、あるいは、新しいテーマで新しいグループ活動を開始する、また、コンソーシアムで培った人の繋がりを大切に維持する、いずれも大歓迎です。
- コミュニティ化に伴い、活動の主体は企業から個人へ移行します。 コミュニティでは、会員の一人一人が責任をもって、やりたいことを自由に、のびのびとできることこそが肝要です。そして、それが実現してこそコミュニティ化の意味があります。
- コミュニティになっても、英語名称はAITC!
- Advanced IT ConsortiumのCをCommunityに読み替えてのAITCです。
- 皆で、コミュニティとしてのAITCを育てていきましょう!
- 会員募集について
- 先のご案内では、コミュニティ会員(会費無料)の申し込み期限を下記のように設定しておりましたが、もし未了の方がおられましたら、7月12日のメールを再度ご参照の上、staff@atic.jp宛てに申し込み情報をご送付ください。
- 正会員(法人、個人事業主)、特別会員: 2021年9月30日(木)
- 準会員(個人会員、学術委員): 2021年8月31日(火)
- 設立総会について
- コミュニティ設立総会は、10月22日(金)にコンソーシアムの最終総会に続いて、設立総会および懇親会(コンソーシアム&コミュニティ合同)をフルオンラインで開催いたします。別途ご送付の開催案内をご参照の上、ぜひ皆様揃ってご出席ください。
最後にひとこと
愛読いただいた「AITCニュースレター」も本号をもって最終回となります。11年間ありがとうございました。