AITCニュースレター
第28号 - 2021年1月2021年新春のご挨拶
明けましておめでとうございます。AITC のイメージキャラクター『ハルミン』です。いつもAITCに温かいご支援、ご協力をいただきありがとうございます。 今年もどうぞよろしくお願いいたします。
2020年は新型コロナとの予期せぬ闘いに明け暮れた年でしたが、同時に、新型 コロナを契機に、在宅勤務やオンラインミーティングが急速に普及し、政府も 脱ハンコをはじめDX化の取り組みを強化しています。
そのような環境下、昨年10月9日(金)にオンラインで開催した「第11回総会」では全会一致で全議案が承認され、 本年8月31日(火)をもって会員規約に定める本会会期を終了することとなりました。 (総会議案書はこちらをご参照ください)
総会記念講演は前年に続きDXにフォーカスし、山本修一郎先生※から「DX推進知識の共特化」と題し、
DX推進における異なる専門知識を統合する共特化(Co-Specialization)の必要性、重要性についてご講演いただき、AITC活動へのエールもいただきました。
(動画はこちらからご参照ください)
※名古屋大学 名誉教授、AITC顧問、経済産業省「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」委員
最後の1年、AITCは従来の活動の集大成に取り組むとともに、Withコロナ時代のニューノーマルを支える先端IT活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する情報発信や議論等にも取り組み、ICT(先端ITを包含)の利活用による企業の社会的価値の創出へ貢献することを目指してまいります。
成果発表会報告
澤崎 章二さん(運営委員会セミナー・イベント担当)
AITCでは1年間の部会活動や協働プロジェクトの実績に基づいて「成果発表会」を行っています。年初より今年も年度終了後(年度末は8月末)に開催するべく打ち合わせを開始しました。ところが、新型コロナウィルスが発生し、「緊急事態宣言」が発令されるという異常事態となりました。会員各社の多くが自宅待機、社外での接見禁止となり、必然的にAITCの部会活動もFace To Faceの活動は休止となりました。リモートでの活動に切り替えるなど工夫をしましたが、大きな影響が出てしまいました。
「成果発表会」は、AITC活動の中核である部会で取り組んだ研究・検証成果を広く発表・提供することで、業界と社会へ貢献しようというものです。毎年様々な工夫を凝らして開催していますが、今年はこの状況において、これらが十分できるか、そもそも開催できるか大変苦悩しました。
運営委員会で協議の結果、リモートで行うこと、開始や発表の時間、リモート向きの内容と演出を考慮することが決定されました。
荒本 道隆さん (クラウド・テクノロジー活用部会リーダー)
今回の成果発表会では、クラウド部会が運用していた気象庁XML取得APIを2020年8月末に停止させたので、その7年間の歴史を発表しました。
気象庁様とは、AITCの前身であるXMLコンソーシアムが気象庁XMLの仕様作成に協力したご縁で、AITCになってからも部会活動や様々な活動に参加してもらいました。2012年末に、その気象庁様から気象庁XMLが無料で配信されると聞き、クラウド部会内の数人が個人的に受信していましたが、当時はPUSH方式のみで『誰でもは気軽に参照はできない』ので、『誰でも気軽に気象庁XMLが参照できるようにしてみよう』『本物のデータとクラウドを使って実際のサービスを運用してみよう』という軽いノリで始めました。
本物のデータとクラウドを使って運用することで、予想外の課金が発生したり、想定外の大量アクセスがきたり、思いがけないところから問い合わせがきたりと、得難い経験をすることができました。
本物の過去データとアクセスログが大量に蓄積できたので、今後は『クラウドを使って大量データをどうやって分析するか?』をやっていく予定です。
道村 唯夫さん(コンテキスト・コンピューティング研究部会リーダ)
コンテキスト・コンピューティング研究部会では、主観を重視した社会知性という考え方が提唱されていることを背景に、人と機械の役割分担で大量の非構造化情報源に対する意味処理が可能になるという仮説のもとで、個人と社会の知性が階層的に連動する情報基盤としての社会知構築を目指して活動しています。
今期は武蔵野大学の林浩一教授を新たに部会顧問にお迎えしてロジカルシンキングとコンテキスト・コンピューティングの関係を議論し、小さな事例として協働プロジェクト「空気を読む家」のシナリオを題材に高齢者の転倒を検知した後のふるまいについて議論し社会知のモデル構築に挑戦しました。
成果発表会ではあらためて社会知と意思決定の関係について整理し、現場での意思決定に必要な実践的な知が必要でありことに触れ、転倒検知後のふるまいのモデルを洗練する過程での気づきとしてその内容のブラッシュアップと表現形式の改善について発表しました。モデルの構築では当初はトゥールミンモデルを忠実に重ね合わせるように努力してみたのですが、論理に時系列や並行状態を取り込むことはたいへんに困難で、時には矛盾した主張につながることもあり、ルールベースモデルとして確立するために論理とアルゴリズムを分離するなど、包摂と分解を繰り返すこととなりました。
今後は社会知の社会実装による検証を目指して活動していきます。
井出 将弘さん (ビジネスAR研究部会リーダー)
第10期の成果発表会では、第9期の成果発表会での発表を踏まえ、ARの将来像とBizAR部会が考える今後の人間中心のAR設計についてお話ししました。
前半のARの将来像の話ではまずARとは何か、ビジネスAR部会の考えるARとは何かについて整理し、人間拡張(AH)の位置づけ、ビジネスARのARはサービスARという言葉を提案しました。 そしてARは人間中心のテクノロジーであり、ARによって「現実感」を拡張するためには人間のわからなさとコンピューティングは向き合う必要があるとまとめることができました。
後半の人間中心のAR設計の話では、前半の話を受け、今後拡大していく仮想世界に対して人をどのように存在させるかという課題を提起し、現実感をもたらすARの設計のためにはコンテキストのデザインが重要であると提案しました。 また人間中心の設計のためには人間拡張の知見から人間を単純な刺激 ⇔ 反応モデルではなく、行為 ⇔ 結果知覚モデルとして行為と結果のフィードバックループの中での認知の変化を捉える必要があることも提案しました。
第10期の成果発表は今までの活動の振り返りと将来像の提案が中心でしたが、来期に向けては今回整理できたARの将来像に向けて協働プロジェクト「空気を読む家」における実装を中心に将来像の実現に活動していく予定です。
松山 憲和さん (協働プロジェクト・リーダー)
協働プロジェクト『空気を読む家』は、"居心地の良さを考えて、実現する家"をテーマに AIやIoTという先端技術に加え、空間OS、コンテキストコンピューティング、マンガ駆動開発というAITC独自の技術を組み合わせ 5つの部会が協働で議論、実証実験を行っています。
これまで、玄関、寝室、リビング、キッチンという場所における、それぞれの課題を設定し 『空気を読む家』では、どう課題を解決するかにチャレンジしてきました。
今回は、直近1年間で取り組んできた『安心安全を実現する空気を読む家』をテーマに 離れた実家に暮らす母親の安全を守り、安心して生活できる家について、考察と技術的実験を行った成果を紹介しました。
- AIエンジン NVIDIA Jetson Xavierを使った姿勢検出と物体検出
- 検出した姿勢や物体を3Dモデルに再構成し、裸眼立体視ディスプレイ LookingGlassに表示
- LeapMotionによるジェスチャー認識で、スマート照明TP-Link Kasaをリモート操作
- これら全てのデバイスを連携する空間OS
いま知っておきたい AITCのできごと
- この1月からDXに関するWeb連続セミナーを開始します!
- AITC最後の1年の重点施策であるデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する情報発信や議論等の取り組みの一環として、1月下旬から5月まで「Webセミナー 〜DXシリーズ〜」を開催いたします。
- DXの第一線で活躍されている講師陣の講演やパネルデスカッションをお聞きし、意見交換も行える絶好の機会です。
- 別途ご案内の詳細プログラムをご参照の上、奮ってご参加ください。
- 「空気を読む家」集大成! ITフォーラム2021で講演します
- 情報処理学会のITフォーラム2021が来る2月3日(水)に開催され、 例年通り「AITCフォーラム枠」(13:00〜17:30)にて講演します。
- 今年は、「『空気を読む家』Final! 」と題し、DXによる家の価値をどのように向上できるか議論や実験をしてきた内容について、家一軒全部を対象とした「空気を読む家」の集大成としてご紹介します。
- 講演は、マンガ駆動開発で課題分析する「デザイン」、先端ITで実現した「実証実験」、コンテキストコンピューティングで紐解く「将来展望」の3テーマで構成しています。デモなどを交え、先端ITによる「空気を読む家」を実感いただけます。
- 今年は、ITフォーラムもオンライン開催となり、現在参加者募集中です。みなさまぜひご参加ください。参加費は無料です。
ITフォーラムの詳細、申込はこちらからお願いいたします。