AITCニュースレター

第25号 - 2020年4月

AITCからのお知らせ

このたびの新型コロナウイルス感染拡大を受け、 AITCでは2月下旬より集合スタイルでのイベント、部会、勉強会の各種活動を一時中止とし、 必要に応じてWeb会議やSNS等で代替させていただいております。 状況が落ち着き、再開の目途が立ちましたら速やかに活動を再開する計画です。
 一日も早い事態の収束を祈っております。

今号では昨年12月から本年2月初旬までに実施された3つのイベントについてご紹介いたします。お楽しみいただければ幸いです。

WXBC主催 & AITC協力イベント
「第3回AIチャレンジ!」実施報告

すでにご存じの通り、AITCは「気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)」の会員として、 WXBCの設立当初から主に技術的側面からその活動に寄与しています。

  • 注:気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)は、2017年3月に気象庁主導で設立された産官学連携の組織です。 多様な気象データを高度利用し、我が国における産業活動の創出・活性化を目指し活動を展開しています。

活動開始3年目となる昨年、WXBCはテクノロジー研修の目玉として「AIチャレンジ!」を開催しました。 毎回、WXBC会員が企画・運営に協力する形態として初回は富士通社、2回目はグルーブノーツ社とAITC、 3回目はソニー社とAITCが実施しました。

本記事では、「第3回AIチャレンジ!」(2019年12月16日開催)についてご紹介します。

当日は、募集人数30を超える36のWXBC会員が参加されました。 一連の学習を通じて気象データとAIを自社の業務に活用できるようになることを目指し、 「気象データと電力データ」を題材に、コーディングなしでAI開発を実現するツール 「SONY Neural Network Console(以下、NNC)」を利用して、 「AI設計の概要」や「AIを利用した需要予測」等を体験学習形式で学びました。

先ずは、「Deep Learningのもたらすゲームチェンジとソニーの取り組み事例」 と題して NNCの開発者であるソニー社の小林様からお話いただき、続いて気象庁の大和田様から 「気象データ × ソニーNeural Network Console試用体験のご紹介 〜電力データと気象データを使った分析〜」 をご紹介いただきました。

ここまでは座学ですが、以降は全てAITCによる演習タイム!
先ず「データの入手&AI投入に必要な加工作業」として気象庁のサイトから入手した気象データを NNC に投入するため Excelで整形する準備を荒本さん(注1) が講師となって行いました。続いて吉田さん(注2)を講師に「ソニーNeural Network Console入門」でその基本的な操作法を学び、 最後はNNCを使っての「需要予測&チューニング」を実践しました。

  • 注1:荒本道隆氏、クラウド・テクノロジー活用部会リーダー
  • 注2:吉田裕之氏、AITC開催「身近になったAI開発シリーズ」教材開発&講師

1日コースとしては内容がリッチで、忙しくも充実した研修でしたが、AI初体験者、 NNCが初めての方や使った経験のある方などレベルは様々ながら、 参加者からは高い評価とコメントを以下のようにいただきました。

  • 演習で多少バタバタしたが、本日の内容は大変ためになった。早速、会社で本日のことを展開して実務に活かしていきたい
  • ハンズオン中心の内容でとても充実しており、色々試すことができ勉強になった
  • 受講後にある程度、自分で試行できそうだという確信がもてた
  • 是非、「AIチャレンジ!」を続けて欲しい。NNCの続編を開催して欲しい
などなど。

以上ご紹介したWXBCの「第3回AIチャレンジ!」はAITCが2019年の一年をかけて実施した 「身近になったAI開発シリーズ」が土台となっています。AITCでは、昨年のご好評に応え今年も 「身近になったAI開発シリーズ2」として開催してまいります。

このシリーズ2は、2月開始予定のところ新型コロナウイルス感染拡大によるイベントの開催自粛要請を受けて開始を延期しましたが、 要請が解除されましたら速やかに開始いたします。去年と同様に、ソニー社の小林様のご講演と全6回のNNCハンズオンを行います。 どちらもAITCの会員、非会員いずれにも参加いただけるようオープンな活動といたします。どうぞ、ご期待ください。

「シニア勉強会 & 身近になったAI勉強会」の
合同発表会を開催しました

「一からはじめるIoT」をテーマとするシニア勉強会と「身近近になったAI開発シリーズ」の勉強会で結成された全9チームが、 半年に渡る活動成果を 2020年1月25日(土)に発表しました。 どちらも、興味のあるテーマを出し、自分がやってみたいチームに参加します。月1回オフラインで集まってのミーティングや、 オンラインでの開発を経て、その成果を発表資料にまとめました。 各チームの参加者は所属している会社もバックグラウンドもバラバラでしたが、 あえて「各自が経験した事の無い領域を担当する」チームもありました。

業務ではないので必ず成功する必要はないし、失敗しても困る顧客は居ません。 それよりも、普段の業務では出来ないことをやった方が新しいスキルを習得するチャンスになります。 以前の成果発表会でも「全然うまくいかなかった。デモも完成しなかった。でも楽しかった。」 という発表をしたチームがありましたが、それが良い前例となっていると思います。

「一からはじめるIoT」では、手作りしたデバイスによるデモを中心とした発表がなされました。 各チームとも、動作や見た目を良くしようと、何度もデバイスを作り直したそうです。 複雑なものが多かったために、デモでは様々なトラブルも発生してしまいましたが、 うまく動いたときにはたくさんの拍手がおこりました。

「身近になったAI開発シリーズ」では、SONYのNeural Network Console と実データを組み合わせることで色々な予測を行いました。 センサーを身に着けて自力でデータ収集したチームや、 様々なオープンデータを利用したチームがありました。実際にやってみたからこその自信に満ちた発表でした。 また、独学では得難い知見をチームで活動することで得られた、との事です。

各チームの詳しい内容は下記の公開資料をご覧ください。

「一からはじめるIoT」と「身近になったAI開発シリーズ」は、再び最初からリピート開催します。 次回はどちらもAITC会員以外も参加できるので、興味を持った人は是非ご参加ください。

ITフォーラムで、協働プロジェクトの
発表とデモをしました

2月7日に開催されたITフォーラム2020において 協働プロジェクト『空気を読む家』の最新状況 について発表を行いました。

会場の学術総合センター ・一橋講堂と案内

今回のテーマは「安心安全:見守り」です。 家の中の危険や遠隔地の家族の見守りに注目して議論や実験を各部会で行い、その成果をまとめて発表いたしました。 協働プロジェクト『空気を読む家』の活動概要については以下に資料がございますので、ご覧ください。

今回の発表では成果発表セッションの前に、タッチ&トライとして、 遠隔地の親の家と自分の家をつなぐ窓をテーマにしたデモをしました。 空間OSを中心にして、各部会の知見・技術を持ち寄ったリアルタイムで インタラクション性のあるデモを実際に来場者に体験していただきました。

構築したデモについて以下でご紹介します。

遠隔の親の様子をセンシングする技術として「小型」・「静か」・「高性能」なエッジAIデバイスを活用し、 画像による姿勢推定、物体認識で取得したデータをリアルタイムに空間OSに連携。画像認識の工夫により立位、臥位という姿勢状態の判定を可能にしました。

黒い箱がエッジAIデバイスである NVIDIA Jetson AGX Xavier

空間OSを通じてセンシングしたデータを、裸眼立体視ディスプレイ LookingGlass 内の空間に、アバターとしてリアルタイムに可視化。 カメラで撮影した情報をそのまま表示するのではなく、見守られる側のプライバシーに配慮した可視化表現を行いました。 バーチャルな空間を、立体的に裸眼で体験できる LookingGlass は訪れた方の目を引いていました。 またハンドトラッキングセンサー LeapMotion による LookingGlass 内のバーチャルな照明操作も体験者を楽しませていました。

左のディスプレイが裸眼立体視ディスプレイ LookingGlass

LookingGlass 内の照明操作の結果はまた、空間OSを通じて遠隔の親の家のスマート照明にリアルタイムに反映されました。 LookingGlass の緊急連絡ボタンを押した際は、赤色で点滅し周囲の方に緊急であることを通知しました。

スマート照明が点灯した様子(ホワイトボードの右上)

デモの体験者はカメラに映った自分の姿勢が LookingGlass 内のアバターに反映される様子と、 LookingGlass 内のバーチャルな照明を操作することで現地のスマートライトが変わる様子について興味津々な様子で、 活発に発表者と議論を行うところが見られました。

デモの体験者と活発に議論を行う様子

当日の発表資料は、以下のリンクからご覧いただけます。 参加できなかった方は、是非、発表資料だけでもご覧ください。

おすすめの図書をご紹介 「よん得」(その2)

こちらのコーナーでは、AITCの部会等でも活用し最新の技術が理解できる、 あるいは、みなさまにおすすめの「読んで得になる」図書をご紹介いたします。 今回は、コンテキストコンピューティング部会からのおすすめです。

  1. 「集合知とは何か - ネット時代の「知」のゆくえ」
    • 西垣 通 著、中央公論新社、2013年2月出版、220ページ、902円(新書版)
    • 人の主観を集めた社会知性としての集合知について、基礎情報学を中心に哲学や脳科学までを包括的に捉えて、その可能性と社会への影響を示しています。一部ステレオタイプなバイアスと感じる部分はありますが、計算機の汎用人工知能化を否定し、計算機を人の能力の増幅装置として活用する近未来の展望が見えてきます。
    • その他の参考情報はこちらから
  2. 「信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム」
    • 山岸俊男 著、東京大学出版会 1998年5月出版、224ページ、3,520円(ハードカバー本)
    • 社会心理学の観点から「信頼」について考察された書籍です。社会における「信頼」について、実証・分析を通じてその構造を明らかにしています。中では日本と米国の「信頼」の違いについても言及されており、大変参考になります。
    • その他の参考情報はこちらから

次回もコンテキストコンピューティング部会からのおすすめをご紹介する予定です。お楽しみに。