AITCニュースレター
第24号 - 2020年1月2020年新春のご挨拶
明けましておめでとうございます。AITC のイメージキャラクター『ハルミン』です。いつもAITCに温かいご支援、ご協力をいただきありがとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
すでにご存じの通り、昨年10月7日には「第10回総会&第9期成果発表会」が開催されました。総会では全会一致で全議案が承認され、これをもって第10期の活動が本格的に開始しました。 (総会議案書はこちらをご参照ください)。
総会記念講演では、「DX推進における先端技術活用と政策展開 〜『2025年の崖』を超えてデジタル競争の勝者へ〜」と題するご講演を経済産業省商務情報政策局情報産業課・ソフトウェア産業戦略企画官 和泉憲明様よりいただきました。政策担当者の視点から『2025年の崖』を取りまとめるにあたっての問題認識や先端技術活用に関する動向を踏まえた課題解決・競争力強化のための政策展開に関し、和泉様の幅広い知識とご経験を踏まえてのお話は日本と企業のおかれた現状に鋭く刺さるもので大いに刺激、魅了され、ユーモアに包みながらの鋭い示唆の数々に納得し、拝聴いたしました。
さて、設立10年目となる今期、AITCは5つの部会名であるクラウド、コンテキスト、AR、UX、NUIの各技術に加え、量子コンピューティング、IoT、AI、ROS、セキュリティ、ビッグデータ、ブロックチェーン等、今もっとも注目度の高い技術分野にも取り組んでまいります。
新しい技術にワクワクし、調査・研究・検証を楽しみながら、失敗を恐れず挑戦できる場!何が使えるのか、何が残るのかを見極めながら、AITCは技術と知見を広く発信してまいります。今年もよろしくお願いいたします。
「身近になったAI開発シリーズ」
成果発表に向けて最後の追い込み中!
昨年1月から開始した「身近になったAI開発シリーズ」では、ディープラーニング技術に触れる敷居をぐっと下げてくれたツールとして、グルーブノーツの「MAGELLAN BLOCKS」とソニーの「Neural Network Console」(NNC)を取り上げて、製品紹介(AITCオープンラボ)やハンズオン(会員限定)を月例で計7回開催してきました。特に、NNCのハンズオンは4回にわたり、全結合・Autoencoder・CNN・RNNという4種類の基本的なニューラルネットワークの試作を通じてそれらの特徴を理解し、同時に活性化関数・損失関数・最適化戦略・正則化技術の様々な組み合わせを試行錯誤していくというAI開発特有のプロセスを身に付けてきました。
受講者アンケートによると、ハンズオン全般については「非常に満足」と「満足」の合計がなんと95%、MAGELLAN BLOCKSを「是非使ってみたい」と「使ってみたい」の合計が94%、NNCも92%という結果が出ており、参加された会員の皆さんが今まさに必要としていた学習の機会を提供できたものと考えます。一方で、難易度については2/3が「丁度よい」に対して、1/3の方々が「難しい」と答えています。いただいたコメントからは、ツールそのものやハンズオンの題材・資料が難しいわけではなく、2時間x4セッションに対して学習すべき内容が豊富過ぎることが課題と考えられます。
9月以降はグループに分かれた活動を毎月実施し、競馬の着順予想、万葉集風の和歌自動生成、気象データを使った需要予測、乗馬した馬の気持ちの理解などに取り組んでいます。来る1月25日(土)午後には、IoTをテーマに活動しているシニア技術者勉強会と合同で成果発表会を開催します。興味を持たれた方はぜひお立ち寄りいただけると幸いです。
また、本年2月からは「身近になったAI開発シリーズ」(シーズン2)として、これまでの活動を通じてブラッシュアップしたハンズオン資材を活用して社会に広く貢献することを目的に、AITC会員に限定しないオープンな勉強会を開催していく予定です。課題となった内容のボリュームについては、2時間x6セッションとすることで余裕をもって取り組めるようにするつもりですので、ご期待いただければと思います。
『量子コンピューティング シリーズ』を開催しました
新しい技術への取り組みとして、2019年4月から『量子コンピューティング』についてセミナーと勉強会を開催しました。
前半はオープンラボとして、富士通、IBM、日立製作所の3社から、量子コンピュータやアニーリングの仕組みと各社の取り組み&現状について説明してもらいました。詳しい話を聞く機会のない領域だけに、参加者からは「特徴や今の状況を初めて聞けて、とても良かった」という意見が多かったです。登壇者の方からは『量子コンピュータが実用化されるまでには時間があるから、それまでに課題を数式に変換するセンスを磨いておく』とのアドバイスをいただきました。その時はあまりピンときませんでしたが、後半を聞くことでその意味が分かりました。
後半はAITC会員限定の勉強会として、「プログラマーのための量子コンピュータ入門」として3回にわたり、量子コンピュータの基礎、量子ゲート型と量子アニーリング型それぞれを使った開発方法について解説してもらいました。量子の定義から始まり、数学の行列の計算や、量子の挙動を理解するためのブロッホ球、そして量子コンピュータを使ったプログラミング環境と実行方法まで、具体的な課題を解くまでを実演してもらいました。例えばアニーリングでは、課題を数式に変換し、その数式をQUBO行列と呼ばれるものに変換し、そのQUBO行列を入力して最適解を求めます。数式を自動的にQUBOに変換してくれるPyQUBOというツールもありますが、「C言語を理解するためにアセンブラを知る」のと同じように、「PyQUBOを正しく使いこなすために、QUBO自体を理解しておく」ということだと思います。また、古典コンピュータでは分岐(IF)やループ(FOR)を意識するのと同じように、量子アニーリングではQUBOを意識しながら課題を分析することになります。
参加者からは「具体的なイメージをつかむことができた」「分かりやすかった」との声が多数ありました。
後半の内容にさらに加筆した以下の資料がSlideShareで公開されています。参加した人も、タイミングが合わずに参加できなかった人も、是非、参照してください。
いま知っておきたい AITCのできごと
- シニア勉強会&AI勉強会の合同発表会を開催します
- 2020年1月25日(土)午後に、シニア勉強会とAI勉強会の合同発表会を開催します。 どなたでも参加でき、実際に動いているものをその場で見ることができるので、是非、ご参加ください。
- シニア勉強会では、5チームがIoTに関するものを作成しました。
- チームランドリー:洗濯物の日焼けを防ぐ
- あとちょっと:調味料などの液体の残量をスマートに把握
- 新鮮組:冷蔵庫内の賞味期限を正確に把握したい
- Lost+Found:出かけたときに、鍵をかけた?
- 自分専用アメダス:雨音から雨量を判定
- AI勉強会では、4チームがSONY Neural Network Consoleを使って勉強しました。
- ホースライド:馬の気持ち予測にチャレンジ
- aiCATs:身近なデータ(気象データ×交通データ等)を使った予測
- なんちゃって文豪:講義のおさらいと、講義内容を応用した予測モデルを作成
- 帰ってきた馬天気:気象データを使った競馬予想
- 以下のURLから参加申し込みをお願いします。
- https://connpass.com/event/160813/
【新コーナー】 おすすめの図書をご紹介 「よん得」(その1)
今回よりこちらのコーナーで、AITCの部会等でも活用し最新の技術が理解できる、みなさまにおすすめの「読んで得になる」図書をご紹介いたします。 初回は、クラウド部会からの量子コンピューティング関連のおすすめ2冊となります。
- 「最適化問題とWildqatを用いた量子アニーリング計算入門」
- 久保穂高 著、2019年6月出版、143ページ、980円(ダウンロードPDF版)
- 量子コンピューティングの中でも、量子アニーリングに特化した参考図書です。部会でも輪読等で活用しているものになります。
- その他の参考情報はこちらから
- 「量子アニーリングの基礎」
- 西森秀稔,大関真之 著、共立出版、2018年5月出版、160ページ、2,160円(ソフトカバー本)
- 量子アニーリングの参考図書です。機械学習への応用やベンチマークテストの例など、幅広く取り上げられております。
- その他の参考情報はこちらから
次回はコンテキストコンピューティング部会からのおすすめをご紹介する予定です。お楽しみに。